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コラム
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私はお麦 |
3月20日号のこの欄に「私はお米」が載っていましたが、「米麦」という言葉があるように、お米さんと並んで、私こと麦も日本人の主食の代表です。 しかしながら、年輩の方はご記憶でしょうが、池田元首相の有名な言葉「貧乏人は麦を食え」とか、水田の「裏作」などと、どちらかというと、お米さんに比べて日陰者扱いです。 日本の食糧自給率をみても、米が100%と国内派であるのに対し、麦は僅かに10%と海外依存派です。一方、目を転じて国民一人1年当たりの純食料供給量はというと、1933年(昭和8)には、主穀中、米の比率が84.3%だったものが、2000年(平成12)には66.5%と低下した反面、その他(麦、雑穀)は15.7%から33.5%へと倍増しています。 もっとも、その他の内訳をみると、小麦が9.5%から32.6%へと3倍以上も増えていますが、大麦、裸麦は12.4%から0.4%へと激減していますし、2.9%あったコウリャン等の雑穀の類は姿を消しています。 この辺で、私どもの素性についてお話ししましょう。私どものルーツは中央・西アジアの乾燥地帯です。気候の変化で狩猟対象の動物がいなくなり、困った人たちは雑草の種子に目をつけ、粒が大きく豊富に実るように改良したものが、私ども麦一族の共通の祖先です。したがって、元来低温、乾燥に強い冬作物です。 日本には縄文後期に伝えられていますが、全国的に普及したのは江戸時代になってからです。粒食としての大麦(押麦)と、めん類、団子、すいとん、といった粉食としての小麦の両者を食生活で並存させたのは、世界でも異色といわれています。 麦類には沢山の仲間がいますが、日本では小麦、二条大麦、四条大麦、それに裸麦を総称して「四麦」と呼び、仲間内の代表です。 小麦は粉の形で用いられますが、硬質の小麦は「強力粉」として、パン、ギョウザなどに使われ、中間質のものは「中力粉」となって、うどんなどに適しており、最後の軟質の小麦粉は「薄力粉」と称し、ケーキや天ぷらの衣などに向いています。 日本産は中間質なので、うどんや団子などに最適な反面、パンには不向きのようです。したがって、パン作りにはどうしても海外産のメリケン粉ということになります。 大麦やライ麦はビールやウイスキー、燕麦はオートミールの原料となっています。人様以外にも、小麦の表皮のふすまや、大麦、燕麦は家畜にとって大切な飼料です。 小麦はほとんど海外依存と申しましたが、ひとつだけ私の自慢話をご披露しましょう。 1935年(昭和10)に、岩手県農事試験所で「農林一〇号」が作出されましたが、第二次大戦後、アメリカ農務省のS・C・サーモンさんが、占領軍の農業顧問として来日した際、短稈の農林一〇号に着目してアメリカに持ち帰り、交配の末、驚異的な収量の品種が生まれました。 その後、農林一〇号の遺伝子を受け継いだ500以上の品種が50カ国以上に広がり、生産量の増加がとくに発展途上国の飢餓を救う結果となり、「緑の革命」という言葉が生まれたほどです。 小麦、大麦それに裸麦のいわゆる四麦の作付面積は、1900年(明治33)の1782千ヘクタールから、一世紀後の2000年(平成12)には236千ヘクタールと8分の1に減っています。 米の生産調整に伴う転換作目として、麦作に重点が置かれ増加に転じましたが、その後また減少しています。ただし、昨今再び、小麦、六条大麦の作付面積が上向いています。 最後になりましたが、米の輸入関税化や、生産調整などの動きに目を奪われがちですが、実をいうと、私ども麦ほど、国の統制下に置かれている農作物はありません。 というのは、国内産の麦については、制度上、政府が全量無制限に買い入れることになっていますし、輸入麦についても、全量政府が買い入れるという国家貿易のもとにあります。 平成10年5月に閣議決定された「新たな麦政策大綱」にしたがい、これらの制度も含めて平成15年3月末で「専増産ふすま制度」が廃止されるなど、各面での見直しがすすめられています。(MMC) (2003.5.12)
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