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【住友化学】
蘇る「フサライド剤」

クレハから登録の譲受

 優れた殺菌効果をもち、イネいもち病防除剤として国内外において広く愛用されている...

 優れた殺菌効果をもち、イネいもち病防除剤として国内外において広く愛用されている「フサライド剤」の落ち着き先が住友化学(株)に決まった。同社が7月3日に発表したもので、(株)クレハ(以下、「クレハ」)から登録を譲り受ける。
 譲り受けの対象商品はフサライド粉剤DL(商品名:『ラブサイド粉剤DL』)、フサライド水和剤(同:『ラブサイドエアー水和剤』)、およびフサライド水和剤(同:『ラブサイドフロアブル』)の3剤。
 また、今回の登録譲り受けに合わせ、クレハが所有する国内登録商標である「ラブサイド」および「RABCIDE」も同時に譲り受ける。
 昭和45年に、最初の農薬登録を取得した「フサライド剤」。40年近くの歴史を誇り、その優れた殺菌効果から、イネいもち病防除剤として国内外において広く普及している。
 特に、国内においては、「ラブサイド」、「ブラシン」(住友化学殺菌剤「フェリムゾン」と「フラサイド」の混合剤)の商品名で、長年にわたり生産者から人気を呼んでいる。
 耐性菌の話も浮上したことがなく予防・治療といった優れた効果、かつ経済的な魅力が特長となっている。
 住友化学では、今回譲り受けた3製剤の農薬登録の維持・更新をはかるとともに、フサライド原体の製造を開始することで、「ブラシン」をはじめとしたフサライド含有製品の販売を継続・強化するほか、国内におけるフサライド含有製品の重要性を考慮し、フサライド原体の供給も行っていく。
 フサライド含有製品の販売は平成21年春から、製剤メーカーへの原体供給は同年秋を予定している。
 住友化学では、「これからも、さまざまな農家・産地のニーズに対応できる製品供給体制を整え、農産物生産への貢献を通じ、事業基盤のいっそうの強化をはかっていく」(アグロ事業部 マーケティング部)としている。
【解説】
 クレハと聞けば、誰しも思い浮かべるのは「クレラップ」だろう。その中にあって農薬事業の基軸は、何と言ってもフサライド(「ラブサイド」)だった。今回の住友化学への譲渡は、「結果的に見て、コスト面などから生産工程を維持できなかった。中国などの情勢変化も大きく関わった」と業界では見ている。
 フサライドの単剤、混合剤のマーケットサイズは約75億円(全農C価ベース・平成18農薬年度)となっている。小さな数字ではない。効果面など、生産者にとっては使い勝手が良かった。
 取扱い会社も北興化学工業、協友アグリ、日産化学工業、日本農薬、サンケイ化学、バイエル クロップサイエンス、三共アグロ、住友化学と国内屈指の農薬メーカーが名を連ねる。今後も販売を継続するかは各社判断となる。
 住友化学は、「スミフェート」(殺虫剤「アセフェート」のジェネリック品)への展開を見せるなど、物議を醸している。国内農薬のリーディングカンパニーとして、積極的に動く同社の今後が注目される。

(2008.07.09)