花の形は、園芸植物としての観賞性を高めるために重要な形質だ。
花は花弁、雄しべ、雌しべ、がく片などの花器官から構成されているが、その形成には転写因子(注2)と呼ばれる多くの遺伝子が関わっている。
シクラメンの花弁数は本来5枚だが、これからバラやカーネーションのような形のバラ咲き品種をつくり出すには、従来の育成法では突然変異誘発を利用するしか手段がなく、多弁咲きシクラメンの実現は困難だった。
共同開発では、シクラメンから雄しべと雌しべの形成を制御している遺伝子の取り出しや解析を行い、独自の遺伝子導入技術とクレスティ法により、雄しべと雌しべを花弁に変化させ、花弁が次々と形成されるこれまでにない花の形質をもつ多弁咲きシクラメンをつくり出した。
雄しべを花弁に変化させることで、遺伝子組み換え植物で課題である花粉の飛散が抑えられ、生物多様性への影響は少ないと見られている。
(注1)クレスティ法 目的とする遺伝子に特定の配列を付加することにより遺伝子の働きを抑制する技術。
(注2)転写因子 遺伝子の働きを調節している因子(タンパク質)のことで、目的とする遺伝子の特定の部位に結合して、その働きを抑制する。
(写真)
今回の技術で作り出した多弁咲きのシクラメン(左)・一般的なシクラメン(右)