平成18年5月から残留農薬基準にポジティブリスト制度が導入され、間もなく5年が経過しようとしている。同制度は、食品衛生法の改正(平成15年)に基づいたもので、一定の量を超えて農薬などが残留する食品の販売などを原則禁止する制度。
この間、生産現場のみならず農薬のリスク評価にも多くの検討課題が生じ、その解決に向けた取り組みが精力的に進められてきた。
本シンポジウムでは、制度の導入によってどのような課題が発生したのか、それらの解決はどこまで進んだのかを検証し、今後の課題を探った。
JA全農営農・技術センターの島村裕二氏は、「制度導入後の農産物からの残留農薬の検出状況」と題し、残留農薬検査室の検出実態を報告した。
「適用外農薬」の残留実態調査が追加されたことから、JA全農も制度に対応できるスクリーニングを目的とした迅速一斉分析法(200成分程度)による検査を2010年から実施している。
島村氏は、現在の一律基準は難しい課題を投げかけていると指摘し、「毒性学的、科学的根拠に基づいた基準値設定、もしくは、リスク分析に立脚した基準値設定への移行がすすんでほしい」と願った。
また、農薬工業会の服部光雄技術委員会委員長は、「制度導入に伴って発生した農薬リスク評価上の課題と対応状況」で講演した。
服部委員長は、今後に取り組むべき課題として、農薬適正使用の一層の推進、ドリフト対策の徹底、魚介類への適正な残留基準値の設定、残留基準値設定に係わる食品区分の整理・見直しなど多数を指摘。
「国際的な整合性を図ることは非常に重要だが、日本の特殊性も加味した法体系やその運用も含めて知恵を出し合い、実効性のあるより良い制度を構築することを期待する」と結んだ。
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講演する服部委員長