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協同の炎、永遠に -ストップ!市場原理主義

協同の炎、永遠に -ストップ!市場原理主義
若槻武行

【発行所】悠々舎 販売:東京六法出版(株)

【発行日】2009年4月

【電   話】03-3354-5411

【定   価】1300円(税別)

評者名:山内偉生
本紙論説委員

本書のプロローグに、世界中に『弱肉強食、格差拡大の市場原理主義、新自由主義の弊害がはびこっている。

 本書のプロローグに、世界中に『弱肉強食、格差拡大の市場原理主義、新自由主義の弊害がはびこっている。そんな今日、協同組合の意味、その理想としてきた「お互い同士が助け合う」という「相互扶助」の意味、今日的な役割と課題を見つめ直し、協同組合運動をさらに広く強く展開していかなければならないと、痛感している。』とある。未曾有の金融・経済危機の今だからこそ、「協同の炎!」をという熱情に駆り立てられて筆者が本書を世に出したと思う。
 筆者は、永年にわたりJAグループ家の光協会に勤務し、家の光、地上などの編集に携わってきた。農村、農家、農協の取材にあたり、相互扶助の理念を胸中深く秘めながら、地域の悩みに涙し、地域の喜びに共感する姿勢を貫いてきた。現場主義に徹した練達の編集者として定評がある。家の光退職後もフリーの「食と農・環境ジャーナリスト」として活躍中である。最近、「安居院庄七」(企画・制作JAはだの)を著したばかりだ。
 格差拡大、企業の経営破たん、自然環境の破壊など混迷の極に達した事態を克服するには、相互扶助、共存同栄の理念を掲げる協同組合の役割と組織力の発揮に期待が高まっていると強調する。かつて、経営の神様といわれた松下幸之助氏が、農協の基本理念と組織運動に強い関心を寄せたと言うが、現在、協同組合の理念とその歩みに経済界からも注目が集まっている。
 本書は、協同組合の源流であるロッチデール公正開拓者組合から日本の産業組合、生協、農協、韓国の農協などの活動を振り返り、ライファイゼン、オウエン、大原幽学、二宮尊徳、賀川豊彦、若月俊一、丸岡秀子、山代巴など協同組合運動の先駆者について記述し、内容が実に豊富である。どの章から読んでも違和感がなく、文章が平易で分かり易い。特徴的な掲載事例は、韓国の農協中央会が進めた「身土不二」、「農村サラン運動」であろう。「農村が生き返れば、国が生きる」と提唱し、国民運動にまで発展し『農』の文化が定着するに至る。綿密な韓国取材に筆者の記者魂が光る。また、「農村婦人は、農協の組織のなかで、その一員として活動していくことが幸せを築く道」と説いた丸岡秀子、「農村女性の経済的自立、農協運動への女性の参加」を訴えた映画「荷車の歌」の原作者山代巴の記述も興味深い。お薦めしたい良書である。

(2009.05.25)