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JA総研 研究叢書1 2つの「油」が世界を変える―新たなステージに突入した世界穀物市場

JA総研 研究叢書1 2つの「油」が世界を変える―新たなステージに突入した世界穀物市場
薄井寛

【発行所】(社)農山漁村文化協会

【発行日】2010年2月

【電   話】03-3585-1141

【定   価】2730円(税込)

評者名:山内偉生

 JA総研はこのほど、『農業は生命総合産業であり、農村はその創造の場である(今村奈良臣所長)』という基本理念を社会に提示するために「JA総研叢書」の刊行を企画した。第1号が表題の叢書で薄井寛理事長の力作。
 前段では、まず産業革命以後の人口の爆発的増加が、植民地開発や新大陸開拓に拍車をかけ、海運による穀物輸送の発展をもたらした経緯を辿る。

 JA総研はこのほど、『農業は生命総合産業であり、農村はその創造の場である(今村奈良臣所長)』という基本理念を社会に提示するために「JA総研叢書」の刊行を企画した。第1号が表題の叢書で薄井寛理事長の力作。
 前段では、まず産業革命以後の人口の爆発的増加が、植民地開発や新大陸開拓に拍車をかけ、海運による穀物輸送の発展をもたらした経緯を辿る。ついで、クリミア戦争、相次ぐ世界大戦など戦争と穀物の関連を細かく分析し、戦争が米国の農業生産を飛躍的に躍進させ、世界の穀物貿易の主導的役割を担うようになった歴史的な解明がされた。
 大豆は、中国大陸が栽培起源地とされている。本来、大豆は、ナタネやひまわり種子とともに油糧種子に分類されるものだが、中国東北部の生産増加から第4の穀物として世界貿易の主役になる。第二次大戦以後、米国の大豆生産は中国をはるかに凌駕し、世界最大の生産と輸出を誇ることになる。WTO協定のなかで、米国政府は輸出国の優位性を保ちつつ、食料貿易のグローバル化を図ってきた。
 一方、南米農業国の穀物生産、大豆生産の増大により、貿易構造に競争関係が生まれる。この中段の流れでの注目は、穀物メジャーの世界貿易戦略に関する記述であり、カーギルなど穀物メジャーの全容が解る。
 後段で、主題の2つの「油」が登場する。バイオ燃料の「油」と食用の大豆「油」である。食料か、燃料かという深刻な問題にぶつかる。中国、インド、ブラジル、ロシアは世界の半分に近い人口を抱え、経済成長による食料消費の顕著な増大が見込まれる。新興11カ国も食料輸入国が多い。一方では燃料生産農業の拡大という趨勢が重なり、穀物・大豆の需給逼迫と価格高騰が強く懸念されている。
 そして人類の食料を如何に確保していくのか、新たな提言が求められると警鐘を鳴らした。
 おそらく原文が多い膨大な資料を的確に分析・解明し、本書を取りまとめた筆者の語学力と力量に感じ入った。多くの人に読んで頂きたい良書である。

(詳しくはJA総研ホームページ内特設ページから)

(2010.06.22)