「総合化」の必要性を体系的に説く
“兼業農家と一体となって事業を肥大化させてきたJAの存在が農業の構造改革を阻んでいる。農業再生のためには、JAから信用・共済事業を分離して農業事業に特化させたり、JA傘下外で主業農家による専門農協を設立させたりするなど企業的農家の育成を支援する必要がある”という「農協の解体的改革」を主張している人を、新たに委員に加えた行政刷新会議規制改革分科会農業WGの規制・制度改革論議が始まっている。WGの当面の課題としてはJAの独禁法適用除外問題などを論議の対象にしているが、信用・共済分離問題も中期的課題とされているそうだから、いずれこの問題に火がついてくることになる。
この問題、JA役職員には重い課題になろう。どう考えるべきなのか。
書名が端的に示しているように、本書はこの分離論に対する反論の書である。協同組合という組織の特性が信用・共済・経済・指導等各事業の総合化を必要とさせていることを、トンプソン組織論を駆使して体系的に明らかにしている。
“…(JAの)農業振興と総合事業という事業領域は、組織の本質である組合員の協同活動を守るために存在し、この事業領域での活動が不十分であれば協同活動を守っていくことができない…”
“…農業振興・営農活動については信用・共済・経済事業の総合的な取り組みが不可欠であり、営農活動と信用事業などの事業は互いに相乗効果を持つ。また、信用・共済事業の収益活用がなければ農業振興は不可能だ…”
といった重要な指摘が随所にある。
今年の3月末まで、日本農業新聞に100回にわたって連載されたコラムを再編成してできている。連載中から共感をもって読まれた方も多いだろうが、再度の精読をおすすめしたい。