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<戦争の世紀>を超えて わたくしが生きた昭和の時代

<戦争の世紀>を超えて わたくしが生きた昭和の時代
吉武輝子

【発行所】春秋社

【発行日】2010年11月30日

【電   話】03-3255-9611

【定   価】2000円(税抜)

評者名:林佳恵

 わたくしは戦争を知らない世代です。しかし父は軍人、事務官でしたが、満州からシベリヤへ抑留され帰国しました。また、わたくしの生まれた年、1950年に朝鮮半島で戦争があったことを知ってから、戦争と全くの無縁というわけではないという思いを、持ち続けてきました。先の戦争について、自ら調べることもできずにおりましたが、本書に出会い、昭和という時代が見えて来ました。

「わたくし」から始まる新たな世界

 わたくしは戦争を知らない世代です。しかし父は軍人、事務官でしたが、満州からシベリヤへ抑留され帰国しました。また、わたくしの生まれた年、1950年に朝鮮半島で戦争があったことを知ってから、戦争と全くの無縁というわけではないという思いを、持ち続けてきました。先の戦争について、自ら調べることもできずにおりましたが、本書に出会い、昭和という時代が見えて来ました。
 '60年の安全保障条約については当時10歳で身近な記憶はないのですが、本書にはなんと'51年サンフランシスコ講和条約の裏で日米安全保障条約が調印されていたと…。
 著者の生まれた年に起きたのは「満州事変」。日清・日露の戦争で得た「日本の特殊権益」を守るための「鉄道爆破」を中国側の挑発としての戦争開始。著者は読者に問いかけます。「どうして、現代史を学ばせたがらないのか」と。確かに、この国の歴史教育は、はるか昔の時代から始められます。そして三学期、バタバタと現代にたどり着くことなく終業式をむかえることに。現代がかかえている諸々の問題は、現代を基点に戻ることから見えてくるものだと思いますが、為政者にとっては、批判的精神を持つ国民がうとましいのでしょう。
 著者がこだわる表記に、「敗戦」があります。この国では8月15日を今でも終戦記念日と銘打って行事を行っていますが、「終戦」には反省、検証が伴ないません。そしてもう一つ、「私」を「わたくし」と。これは「滅私奉公」はしないとの決意です。
 史実を検証することから始まり、二度と同じあやまちは繰り返さないための、日常の歯止め「わたくし」。林も著者に習い、同じ表記にしてだいぶ経ちました。とてもいいことには、口にし、筆にする度に、なぜ「わたくし」なのか意識できるのです。気取っていると受け取る方もおられますが、折をみて理由を話させてもらっています。
 本書を是非、家族の方々とお読みください。農村から再びの犠牲者を出さないために。

(2011.03.28)