ブックガイド

ブックガイド

一覧に戻る

これからの生協はどうなる 私にとってのパルシステム

これからの生協はどうなる 私にとってのパルシステム
中澤満正

【発行所】社会評論社

【発行日】2011年12月15日

【電   話】03-3814-3861

【定   価】1800円(税抜)

評者名:今野 聰

 著者の出版は今年2度目である。前作品『おいしい「日本」を食べる』をすでに書評した。今回は病気療養をおして執筆したという。
 パルシステム生活協同組合連合会は事業高1500億円。3・11大震災被災生協を含み、被災地の提携生産者組織と苦闘を続ける。

生協パルシステムの軌跡から
大胆な生協未来像の提案


 著者の出版は今年2度目である。前作品『おいしい「日本」を食べる』をすでに書評した。今回は病気療養をおして執筆したという。
 パルシステム生活協同組合連合会は事業高1500億円。3・11大震災被災生協を含み、被災地の提携生産者組織と苦闘を続ける。1944年旧満州生まれ。概括すると、明治大学学生運動で学んだ。何故生協運動に自らを投入したか。北多摩単協で、どう経営苦闘を跳ね返したか。首都圏事業連で、分裂とも見られかねない新規事業としての個配へなぜ挑戦したか。そして1990年春の事業連の法人化への決意。最後に後輩に送る激励。副題「私にとってのパルシステム」がふさわしい。以下特徴点を絞る。
 第1に、変化への対応と大胆な予測。農協をふくめて協同組合にとって、避けられないテーマ。著者の答えは、「これから生協はどうなるか」という主題そのもの。パルシステムの設立期メンバーとして、多くの変転・苦闘を乗り越えてきた。だから、恐れぬ予測と真摯な実践が、即問題解決だという。
 第2に個配システムの創造。これなしにパルシステムは語れない。1980年代後期の苦闘の開発物語は、共同購入と個人宅配は互いに対立して、矛盾した。幸い、当時生協はどこでも、いわゆるバブル経済からは自由だった。日本生協連は700坪規模のSSMなどの大型店構想を進めた。店舗近代化が命題だった。その時代に、著者らが新事業の企画と実験を三多摩地区で開始したのだった。この場合の利点はスーパーの出店直撃から自由だったこと。生協の宅配事業は今や「個配」と総称される。全国どこの生協も採用する事業システムになった。
 第3に小さな生協の連合形態の意味だ。この秋、北海道の地域スーパーの雄「アークス」グループは、遂に青森県の有力スーパーと合併、「八ケ岳連邦」経営を語る。垂直統合にあらず。1976年の日本生協連「第1次中期計画」は我慢の限界をこえたという。産直事業については、詳細は不要だろう。
 最後に著者は3・11対応について言う。「放射能汚染食品を断じて扱わない、一方、産地を守れという股さきされた対立論とは異なる第3の方法を考えてもらいたい」。著者の肉声を反芻しながら、病気を克服されるよう祈りたい。

(2011.12.15)