協同組合は地道に復興に取り組む
東日本大震災から、すでに1年を経過した。だが、悲惨な被害報告は、日々続く。そして、この間の復興報告をはるかに凌ぐ。こうした中、昨年10月8日、「仙台シンポ」は行われた。その記録が本書である。冒頭に大内秀明・東北大学名誉教授の「東日本大震災と文明の転換」を基調とする問題提起を載せた。東北が再起・復興する呼びかけでもある。以下10名余の発言の収録。副題「『東北』の豊かな資源を活かす」は良い。当日以外の発言も工夫されている。
10月という時期、シンポの企画は大変だったろう。その記録つくりも一層大変のはず。よくぞ公刊にこぎつけたと思う。関係の熱意と執念に拍手したい。
さて、この本の特徴に触れる。第1は、なんといっても被災現地の生の発言である。とりわけ、協同組合関係者の発言に強烈な復興意志を感ずる。ここでは、木村稔・宮城県漁協前会長「『水産特区』、どんなことがあっても許してはならない」。現在に続く争点である。県政と真っ向からぶつかる県漁業組合の戦いといったらよいか。
第2に、営農の継続への意志と協同組合のあり方。くじける訳には行かないという意思表明。当然であろう。ここでは、本紙にも発言の機会が多い鈴木昭雄・福島県東西しらかわ農協組合長「農協にどれだけのことができるか、これは挑戦です」。タイトルに追加すれば、発言の終わりの部分。「市場原理主義を乗り越えるのは協同組合システムではないかというのが私の到達した結論でした」という。フクシマは現に放射能除染作業の真っ只中である。ゼオライトの施与など、果敢な挑戦のなか、組合長の発言の重さはずっしりである。
そして第3。支援者の立場からの発言。ここでは山本伸司・パルシステム生協連合会理事長「『生きる』『食べる』ことの復権」。復興支援に全力投入したからこそ、今消費者と生産者が交流する、お金に変えられない「富の創造」だという。この重い意味を復唱したい。
これらの発言者に地元宮城県最大の生協・みやぎ生協がいない。逆説的だが、県内最大の70%組織率だからこそ、難題はなんでもありであろう。その苦闘は、別の報告を待ちたい。