食べることは生きること
歯科医師からの「農」への期待
本書は、「歯科医師会からの提言」3部作のうちの第2巻である。
JA全中と日本歯科医師会は、TPP反対でエールを送りあう間柄であるほか、「JA健康寿命100歳プロジェクト」を推進している立場から、平成21年に発足した「生きがいを支える国民歯科会議」にJA全中もメンバーとして参加している。
「食」は人が生きている限り絶つことができない営みである。
本書では大久保満男・日本歯科医師会会長が、料理研究家の辰巳芳子氏、寺の住職で作家の玄侑宗久氏、分子生物学者の福岡伸一氏と「食べる」ことを通して「よりよく生きる」という深いところまで踏み込んで対談しており、「他者への思いやり」や地域社会の絆の大切さを強く考えさせられる。
また、JA全中の伊藤澄一常務も食と命を守るJAグループの取り組みやTPPの問題点などについて寄稿している。
本書は、わが国から「思いやり」や「敬意とか感謝」という貨幣価値以外の複雑なものが「市場原理」の導入によってどんどん取り払われてしまった結果、医療も教育もシンプルだが痩せ細った関係になってしまったと警鐘を鳴らし、東日本大震災を経験した今こそ、「心と心の交流」を取り戻し、再び分厚い経済社会にしていかねばならないことを訴えている。