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現場からのJA運動

現場からのJA運動
(社)JC総研理事 松岡公明

【発行所】家の光協会

【発行日】2012年9月1日

【電   話】03-3266-9029

【定   価】667円(税抜)

評者名:

 世界的な経済秩序、成長モデル、福祉国家、安全・安心など、いままでの「神話」が次々と崩壊するなかで、経済・社会のあり方をめぐってパラダイム転換が叫ばれている。
 そういうなかで、国連は、協同組合がよりよい経済・社会の建設に大きく貢献できると評価し、その発展を期するよう各国政府・国民に訴えるため、2012年を国際協同組合年(IYC)と定めた。IYCのスローガンは、「協同組合がよりよい社会を築きます」である。経済・社会のパラダイム転換について、協同組合がどういう役割が果たせるのか、期待されているともいえよう。

自著を語る
JA運動のダイナミズムの創造を

 世界的な経済秩序、成長モデル、福祉国家、安全・安心など、いままでの「神話」が次々と崩壊するなかで、経済・社会のあり方をめぐってパラダイム転換が叫ばれている。
 そういうなかで、国連は、協同組合がよりよい経済・社会の建設に大きく貢献できると評価し、その発展を期するよう各国政府・国民に訴えるため、2012年を国際協同組合年(IYC)と定めた。IYCのスローガンは、「協同組合がよりよい社会を築きます」である。経済・社会のパラダイム転換について、協同組合がどういう役割が果たせるのか、期待されているともいえよう。
 しかしながら、そうした期待に応えていくためには、協同組合自身もまた、これまでの伝統的な考え方についてパラダイム転換が求められている。協同組合は、30年前に「レイドロー報告」で指摘されたように、「思想」「経営」「信頼」の3つの危機に直面したまま、その後さらにグローバル化も進展し、組織・事業基盤も大きく変化するなかで、その3つの危機が同時進行の状態にあり、それらの「負のスパイラル」に陥っている。JAグループでも、無条件委託販売など画一的な事業方式、組織再編とリストラの限界がみえてきた。
 また、バブルの崩壊後、阪神淡路、東日本の二つの大震災などを経て多くのボランティア活動、NPOが創出され、多くの若者たちが積極的に参加し、社会的存在感を増している。
 一方、既存の協同組合は、組織基盤が高齢化する一方で、若年層からの関心や参加を引き出せないままでいる。政府の失敗、市場の失敗が顕在化するなかで、いよいよ非営利セクターの出番だとか、協同の時代だとか、強調されている。せっかくの追い風が吹いているのに、なかなか帆を膨らませることができないでいる。
 高齢者福祉・子育て支援の助け合い活動など地域活動に取り組んでいるものの、限られた組合員、組合員の利益のための組織というイメージが固定化されているようだ。マスコミもNPO活動は評価するが、JAを評価するような記事はほとんどない。むしろ、悪いイメージの報道が多い。いったい、この差は何なのだろう。
 ところで、「ヤン坊、マー坊の天気予報」の唄に「小さなものから大きなものまで、動かす力だ、ヤンマーディーゼル」という件がある。この「動かす力」がJAにもあるはずだ。組合員間、系統組織間の協同のなかで相互作用が働き、まさに「動かす力」が動いている。JAグループ全体で、組合数770、組合員数約950万人、職員数22万人、経済、信用、共済、医療・福祉など多様な事業の展開、これだけの経営資源を有していながら、まだまだ「動かす力」として十分に使い切れていないところがあるのではないか。
 協同組合の「動かす力」とは何か、それはどういうときに発揮され、蓄積されるのか、それをエンジンとしてどのように協同の輪を広げていくのか、その答えを組合員を含めた地域住民、地域社会との接点、関係性のなかで発見、体験、確信し、JAの「動かす力」を再生産していくという、執着心にも似た努力が求められている。「動かす力」は経済的効果のみならず新たな社会資本(人的関係性)を生み出し、地域社会を活性化していく、そういうJA運動のダイナミズムを創造していきたい。
 本書は、国際協同組合年にあたり、協同組合の基礎構造である参加と民主主義、今後の地域にひらかれたJA運動の方向について、JA職員の皆さんへのメッセージとしてまとめた「書き物」である。実は、本書の出版にあたり18万字を超える原稿を書いたが、分厚い本になること、価格も高くなることなどの指摘を受けて、ブックレット方式で100頁以内、定価も700円の本にしようということで、内容を絞り込むとともに字数を3分の1程度まで大幅にカットしてコンパクトに整理した。はたして読者の皆さんにコンパクトのインパクトがあるのかどうか?


JC総研(日本協同組合総合研究所)理事 松岡公明

(2012.09.20)