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「MA米の管理と流通実態にメスを」

内閣府の有識者会議でも意見
食糧法改正も議論に

 事故米を主食用に転売していた問題で内閣府に有識者会議が設置されたが(事故米穀の不正規流通問題に関する有識者会議、座長は但木敬一弁護士)、9月22日に行われた第2回会合では、「そもそも世界的に食料不足のときに米の輸入をしていていいのか」、「(米の流通規制を緩和した)食糧法の改正もこの会議で議論すべきではないか」といった意見が続出した。また、病院や学校関係にも流通していたことについて「給食に対する政府の補助が少ないのではないか。それが安い原料を求めることにつながった」と指摘も出るなど、この問題をきっかけに米の流通や安全確保策などまでテーマを幅広く設定して議論する方針が確認された。

◆義務的輸入ではない

 とくにミニマム・アクセス(MA)米については広く関心が高まっている。
 MA米は現在のWTO・ドーハラウンドに先立つガット・ウルグアイラウンドで平成2年(1993年)に合意されたもの。同ラウンドでは輸出国が求めた農産物の例外なき関税化が大きな争点となったが、日本は米については関税化の特例措置として最低限の輸入機会の提供を約束した。
 その数量は国内消費量の4%からスタートし段階的に8%にまで引き上げられることになっており、平成7年の40万トン輸入から始まりその後、輸入数量が増えていった。
 ただし、日本は平成11年(1999年)に関税化に移行。そのためミニマム・アクセス数量の増加率が抑えられ平成12年には85.2万トンになるところが、76.7万トン(玄米ベース)となり、以来、WTO交渉がドーハラウンドとして立ち上がったことから交渉期間中は76.7万トンの輸入量となっている。
 MA米のうち、輸入商社と国内販売業者が売り渡し価格と買い入れ価格を同時に提示して入札を行うSBS方式による10万トンは、主食用に流通する運用をしているが、そのほかは国産米の需給に影響を与えない運用としMA米受け入れ合意にともなう生産調整の強化はしないことを当時、閣議決定している。
 しかし、約77万トンものの輸入米とは、米の大産地が毎年日本に上陸し続け今やトップに居座っているようなものだ。19年産米でいえば第1位は新潟県だが、その生産量は65万トンでMA米よりも少ない。「減反をしながらなぜ輸入を続けるのか」という声が出るのは当然のことだろう。
 MA米の輸入量は制度が始まった平成7年から20年3月までで865万トン。用途は、図にあるように主食用は国産米を援助用に振り替えているため需給に影響はないと政府は説明するが、本来、輸入米がなければ国産米で対応していたはずの加工用に319万トンが仕向けられている。
 また、MA米については「義務的輸入」と報道されることが多いが、すでに触れたようにWTO協定では「最低輸入機会の提供」とされている。政府は輸入業務を国家が行っていることから約束どおり77万トンを輸入するものとしているが、カナダなど国家貿易を行っていながら約束したアクセス数量を満たしていない国もあるとの指摘がある。

◆不正転用防ぐシステムを

 事故米とは、今回問題となった残留農薬基準を超えるなど食品衛生法上問題となる米のほか、輸送や保管中に水濡れなどの被害を受けたり、カビが生えたりした米のことである。
 に示したように、政府が保管していた米のうち、平成18年のポジティブリスト制度による農薬残留基準の見直しでメタミドホスが検出されたMA米とカビ毒のアフラトキシンB1が検出されたMA米、そして国産米を含めて水濡れなどで事故米となったもの3900トンを合わせた7400トンが三笠フーズなどへ不正規転用も含めて流通した量である。もっともこのうちにはそもそも食用可能な事故米も600トンほど含まれている。
 これは平成15年から20年にかけて政府保管米から事故米となったものであり、農水省の説明ではこの時期に輸入時点で事故米とされた米が約9000トンあるという。つまり、5年間で1万6400トンが発生していることになる。
 輸入時に残留農薬基準を超えた米であることが明らかになった場合は輸入業者は(1)船への積み戻し、(2)廃棄処分、(3)非食用用途を条件とした販売の3つの選択肢がこれまでは港湾の検疫所長から提示されていた。工業用など(3)の選択肢を選んで直接三笠フーズに販売したルートが図の下に示されている「政府米以外」とされている部分で、双日(株)と住友商事(株)から販売された。

ミニマム・アクセス米の販売状況
不正規流通状況

  農水省は9月28日、流通ルートの全容解明を最優先することにし同日に決めた工程表では10月末をメドに全体像を解明するとしている。
また、事故米麦は非食用に販売することをやめ輸出国への返送、廃棄を行う方針に改めたが、国と輸入業者との契約で、食品衛生法上問題がある場合は輸出国へ返送・廃棄することを明記することも決めた。ただし、返送・廃棄にかかるコストをだれがどう負担するかなど課題もある。
 一方、流通ルートの解明は重要なことだが、この問題を契機に、なぜ米の流通がここまで複雑になっているのかという声も出ている。
先の有識者会議でも、転売が繰り返されていたことについて、「誰がどのような利益を上げていたのか明らかにすべき」との指摘もあり、それが罰則規定のあり方にもつながるとの意見が出た。不正な転売で上げた利益を「吐き出させる」仕組みがなければ再発は防げないのではないかというわけだ。食糧法で規制緩和され米の販売業者は届け出制になったが、「活性化した部分と同時に陰の部分も生んだ」として安全な米を食べるにはどういう流通制度がいいかも考えるべきとしている。
 農水省は米の流通規制について、「届け出の義務づけ、どんな書類を出させるか、届け出どおりの業務を行っているか、そのため権限が議論になる」(石破農相)と検討のポイントを上げ、時期通常国会の法案提出に向けて10月に「米流通システム検討会」を立ち上げる予定だ。また、米のトレーサビリティと原料原産地表示の義務づけについても検討するという。

(2008.10.01)