消費者・国民への理解促進運動も重視
政策提案は(1)22年度対策、(2)新たな基本計画と酪肉近代方針、(3)23年度以降の経営所得安定対策、の3本を柱とした内容だ。
現在の畜産・酪農経営は、配合飼料価格の高止まり等で生産コストが増高する一方、デフレによる価格低迷で収入が減少し、非常に厳しい状況にある。
こうしたなか22年度対策では▽肉用牛の繁殖農家の再生産が可能となる手取りの確保対策、▽肥育経営のコスト割れへの補てん対策、▽生乳の需給安定と酪農の生産基盤を維持するための対策、▽枝肉価格が低迷する養豚農家への支援、などを基本に政策決定するよう提案している(詳細はコチラから)。
一方、新基本計画や酪肉近代化方針については、▽自給率向上に向けて国産畜産物の生産拡大や所得の向上、飼料自給率向上などのビジョン・方策の明確化、▽将来にわたって家族経営を基本に多様な経営体がわが国の畜産・酪農の担い手であることの明確化、などを提案した。
また、23年度以降の対策については、現在、コスト増大と価格低迷で政策の支援水準が低下していることや財源不足などの課題に直面していることを指摘し、これらの課題の克服と需給と価格の安定、生産拡大をはかれる仕組みとすることなどを求めたほか、戸別所得補償制度の導入については、早期に検討スケジュールを示すとともに生産現場の実態をふまえて広く関係者から意見を求めるべきことを強調している。
JAグループは今回の政策提案の実現には国民・消費者の理解が不可欠であるとして2月5日から26日を全国統一行動期間とし理解促進と消費拡大に向けた運動を展開する。日本の畜産・酪農が果たしている役割と現状を分かりやすくまとめたパンフレットも作成した(写真)。
(写真)
パンフレットは「知っていますか?ニッポンの畜産酪農」、「知ってください私たちの今」と題して生産から消費まで、さらに耕畜連携と循環型農業などを説明している
【インタビュー】
どう臨む?畜酪対策
農林水産大臣政務官 佐々木隆博氏に聞く
分かりやすい制度に見直す
『家族経営が成り立つ』を政策の基本に
――現状をどう見ていますか。
酪農も畜産も需要が伸びない状況で需給緩和が進んでいると思います。2日間、北海道を回ってきましたが、酪農では、頭数は減っていないが戸数は減っているため(1戸あたり頭数が増えて)1円の違いがものすごく経営に大きく影響するという。
牛肉・豚肉も価格が低迷し、豚肉については調整保管を発動するという状況にあります。(消費者の選択が)「おいしい」、「安全」よりも「安い」が上回ったという新聞報道もありましたね。そういう傾向に対して、安心や栄養バランス、そういったことから消費拡大支援策もきちんとしなければならないという気がしています。
――対策決定に向けた基本的な考え方は?
政権が変わったのだから民主党らしく、というお話もいただくんですが、23年度以降に戸別所得補償制度を導入することも想定しているわけで、22年度中に制度設計をしていかなければいけない。その折々には酪農、畜産のみなさん方と話をしていかなければならないと思っています。
そのうえで、とりあえず22年度対策では、加工原料乳でいえば補給金単価と限度数量のどちらも触りようがない。もちろん上がるなどという状況にないことは酪農家のみなさん覚悟はしておられますが、とにかく下げないでほしい、どちらも触らないでほしいとずいぶん言われました。
◇チーズ対策重視
そのなかで需給が緩和していることを考えると、たとえばチーズ向けなりへ移動をしていかないと全体(の需給維持)を持っていくことができないわけですね。とくにチーズについては一般予算も取っています。
ただ、チーズ向けに持っていくだけではプール乳価は下がるだけになってしまうので、売れるチーズを作る努力も同時にしていっていただきたい。われわれもお手伝いをするけれども、この点は農協や乳業のみなさんにもお願いをしています。
◇マルキン一本化
牛肉は、制度が変わる年を迎えていますから、マルキン、補完マルキンについてはできれば一本化、われわれの言う分かりやすい仕組みにしていきたいと思っています。
ただ、今年は変わり目ではありますが、23年度以降の戸別所得補償制度のことを考えると、あまり大きな変化はさせないほうがいいのかなと。
基本はトータルとして何とか今年の所得を確保するということを目指しています。
――新基本計画策定の考え方と23年度以降の政策の検討スケジュールは?
まだ大雑把で22年度1年かけて、です。生産費調査も、どちらかといえば今は大型経営に特化していますから、小さな農家のデータまで広く集めたい。
それと同時並行でどういう政策を組むかを検討していかなければなりませんが、先に基本計画の策定があります。品目ごとの自給率目標を立てようとなっていますから、そこも含めてより具体的に示せるようやっていきたい。
私たちは多様な担い手と言っていますが、基本的には家族農業が成り立つことをベースにしていくよう仕組んでいきます。