【酪農】―チーズ、生クリーム向け需要創出
22年度の加工原料乳の限度数量は10万t削減する。この10万tをチーズに3万t、生クリームに7万tを振り向けることを促進する生乳需要創出緊急対策支援事業を関連対策として実施する。総額は58億円。
チーズ向け生乳対策では一般予算で29億円を確保している(国産チーズ供給拡大・高付加価値化対策事業)。これは1kgあたり20円の奨励金を交付するものだが、関連対策ではこの供給拡大対策の対象数量を超えて供給した場合、1kgあたり25円を交付する事業。
生クリームなど液状乳製品向け生乳対策では、基準数量(21年度定着見込み分64万t)を上回って供給した場合に1kgあたり10円を交付する。これで42万tの定着を見込む。さらに前年度の供給量を上回る部分には1kg2円を加算し生乳の需給安定を図る。
そのほか脱脂乳向け生乳についても、新たなに需要を創出して供給拡大する場合に、1kgあたり12円を交付する。
また、加工原料乳価格が過去3年平均価格を下回った場合補てんのために生産者の拠出と国の助成金による生産者積み立て金に対する80億円の補てんを継続する。このうち国費は4分の3。事業の実施期間は22年度から3年間。
【肉用牛】―シンプル化し新マルキン創設
肉用牛肥育農家の収益と生産コストの差を、、一定程度、補てんすることで所得確保のセーフネット策としてきたマルキン事業(肉用牛肥育経営安定対策事業)は、これまで家族労働費部分を補うマルキンと物財費部分を補う補完マルキンとに分かれていた。
今回はこれを一本化し新マルキン(肉用牛肥育経営安定特別対策事業)を創設する。
新マルキンでは粗収益と生産費の差額の8割を補てんする。補てんが行われるのは、四半期ごとの肥育牛1頭あたりの全国平均粗収益が全国平均生産費を下回った場合で、拠出割合は生産者1に対し国が3とした。
事業実施期間は22年度から3年間で対象品種は肉専用種、交雑種、乳用種の3区分。総額で1028億円が措置された。
●子牛では価格低下で家族労働費を補てん
繁殖経営対策では肉用子牛価格が保証基準価格(黒毛和種1頭31万円、22年度)を下回った場合に交付される生産者補給金のほかに、価格が家族労働費の8割水準を下回った場合に差額の一部を補てんする「肉用牛繁殖経営支援事業」が新規事業に盛り込まれた。
対象品種は黒毛和種、褐毛和種、その他の肉専用種。発動基準は黒毛和種で1頭38万円。 基準価格は家族労働費の8割相当として決められたものであり、四半期ごとの平均売買価格がこれを下回った場合、販売された子牛、または自家保留された子牛を対象に、発動基準価格との差額の4分の3を補てんする。
対象子牛は肉用牛生産者補給金制度の契約子牛で事業実施期間は22年度から3年間。総額で142億円を措置した。
【養豚】―全国一本の保証基準価格設定
養豚経営も、豚枝肉価格の低下、生産コストの上昇で収益性が悪化していることから、生産コストに相当する保証基準価格を豚枝肉価格が下回った場合に、その差額の8割を補てんする事業を新規に実施する。
22年度の保証基準価格は1kg460円。拠出割合は生産者1、国1。
全国平均価格が保証基準価格を下回った場合、基金から補てんが行われる。補てんは四半期ごと。事業実施期間は22年度から3年間。総額99億円が措置された。
◆戸別所得補償制度導入も視野
そのほか、配合飼料価格上昇に対応して19年度から3年間限定で事業化された畜産農家の飼料購入に対する資金融通対策(融資機関への利子補給など)を延長(融資枠680億円)する。
消費拡大対策も牛乳乳製品関係4億円、食肉関係9億円を措置した。
自給飼料対策では、耕作放棄地を活用した放牧推進のための面積に応じた定額助成や、飼料用米の定着に向けた地域での栽培実証調査などを支援する新規事業も盛り込まれる。
関連対策のうち、とくに経営安定対策では「全国一本の基準価格など、分かりやすい制度にした」と赤松農相は話し「畜産農家からはぜひ(戸別所得補償)制度を早くいれてほしいという声をいただいている」と導入に前向きな姿勢を示した。
ただ、酪農では生乳の需要落ち込みに対して、現行の仕組みをふまえた緊急の需給調整対策の打ち出しにとどまった。今後の検討がどう進められるか注視される。