◆経営改善にも役立つ
農水省は平成23年度までに主要2000産地でGAP(Good Agricultural Practice、良い農業実践)を導入することを目標に推進を図っているが、19年12月末で導入済み産地が596、導入を検討中の産地が971となっている(図)。主要産地とは米、麦、大豆、野菜、果樹について産地の競争力を強化する計画を策定しているところ。
GAPとは、生産者が自ら農業生産工程全体を見通したうえで、食品安全の確保や環境保全の点から注意すべき点検項目を定め、これにそって農作業を行い、記録・検証して農作業の改善に結びつけようという取り組み。
残留農薬や病原微生物、重金属対策など食品の安全確保と農薬の飛散防止、廃棄物の適正処理など環境保全だけでなく、コスト削減の観点から点検項目を盛り込むことで、経営改善にも役立てることができる。
農水省は生産者が取り組みやすいようにと、GAPの事例として米麦、野菜、果樹など7品目を対象に点検項目を20〜25項目程度とした基礎GAPを策定している。このほか日本GAP法人が食品安全や環境保全のほか、生産者の労働安全なども盛り込んだ約130項目を点検項目とした「JGAP」を策定しており、今年1月時点で102件が認証を受けている。
また、海外では欧州小売業組合が約200項目を点検項目とした「GLOBALGAP」を策定、国内でも9件が認証を受けて輸出促進に結びつけている。ただ、昨年8月にはJGAPがこれとの同等性認証を取得していることから、JGAPは欧米向け農産物輸出に有利とされている。
もっともこうした高度なGAPに最初から取り組むことはなく、むしろ「押しつけられて取り組むものではなく、自らの農業生産を改めて考え直す意識が大事」だと農水省は話す。
そのため産地でのGAP理解や導入に向けた取り組みついて食の安全・安心確保対策交付金による支援措置を講じている。
産地でGAP導入を進めようとする場合、まずは「GAPって何?」から始めなければならない場合もあるだろう。そうした学習会の講師代や、資料購入費、先進地視察などにかかる費用を交付金で2分の1補助をする。
理解が進み生産者の点検項目づくりに取り組む場合は専門家の助言も必要になる。また、地域の農産物の安全確保や環境保全を図るために地域内水質や土壌成分などの分析も必要になる。こうした取り組みも含めさらに記帳用のチェックリストの作成、印刷コストなどにもこの交付金を活用できることになっている。
導入しようとするGAPはどの種類でも対象となるが、助成を受けるにはGAP実践農家を地域でどれだけ増えるのかの目標を示すことが要件となる。19年度は113産地が交付金を活用した。一産地平均60〜70万円程度助成されているという。
◆今年度からハードも支援
20年度予算からはGAP導入をソフト面だけでなく施設などハード面も一体的に支援する予算も措置された。
たとえば、生産者がGAPに取り組んでも共同選果場で区分管理されていなければ実践していない生産者の生産物と混在して扱われることになってしまう。こうしたことを避けるためのGAP取り組み生産者の生産物をロット管理する設備導入や、コンピュータシステム、残留農薬の分析機などハードへの支援を行う。実需者や流通関係者などとの一体となってモデル施設として整備するなど先進的な工程管理体制づくりを後押ししようというものだ。事業実施主体は農業者団体などで2分の1以内の定額補助だ。
第一次公募はすでに締め切れているが今後、第二次公募も予定されている。
GAPとは食品安全や環境保全の観点で、それぞれの農作業段階ごとにどこに注意すればいいかを改めて考え、危害要因を洗い出してみようということが出発点となる。点検項目の例では「農薬は栽培マニュアルや農薬ラベルに記載されている薬剤、使用量を守って使用したか」、「散布作業時に風の強さ、向きを確認したか」、「農薬使用の収穫前日数を確認し、適期収穫を実施したか」などがある。それらを記録点検し、次期作へと活用する繰り返しの取り組みだ。それによって消費者、実需者の信頼確保をめざすものだが「生産者だけでは理解が難しい面もある。普及センター指導員やJAの営農指導員のとの連携で進めてほしい」と農水省生産局生産技術課では話している。
GAP導入の支援事業 都道府県や産地段階におけるGAP手法導入の推進体制の整備・強化、産地の農業実態に即したGAP手法普及マニュアルの作成、マニュアルを基にした産地実証等に対する支援を実施。 (例) ○未来志向型技術革新対策事業のうち 生産から加工まで一貫した工程管理体制の確立、工程管理の効果的な実施に対応できる先進的な施設の整備に対する支援を行い、モデル的な取組の構築を通じて、工程管理手法の普及を図る。 (例) |