◆日本には20以上のGAPがある
GAPとは、Good Agricultural Practiceの略語で、直訳すれば「優良農業の実践」ということになる。16年に農水省が取り組みの推進を公表したときには「適正農業規範」としていたが、最近は「生産者自らが、農業生産工程の全体を見通して、食品安全や環境保全などの観点から特に注意すべき事項(点検項目)を定めこれに沿って農作業を行い記録・検証して農作業の改善に結びつけていく手法」(「第1回GAPの推進に係る情報交換会」資料2)ということから「農業生産工程管理」と呼んでいる。
具体的には、品目や地域の条件等に応じて、農作業の各段階ごとに考慮すべき危害要因等を洗い出し、点検項目を設定する「計画」(Plan)。点検項目に沿って農作業を行い、記録する「実践」(Do)。記録を点検し、改善点を見出す「点検・評価」(Check)。そして点検項目を見直し次期作の作付けで活用する「見直し・改善」(Action)という「PDCAサイクル」をまわしていくことで、質を高めていくというものだ。
ヨーロッパでは、欧州小売業団体・EUREPが作成したGLOBAL GAP(旧EUREP GAP、19年に名称変更)が、自ら世界標準を名乗り世界を席巻しているが、日本では基本的な考え方は同じであっても、個々の具体的な内容が異なるGAPが20以上あるといわれている。
◆GLOBAL GAPに準ずるJGAPとイオン―GAP
次にその代表的なものを紹介する。
「JGAP」(ジェーギャップ)は16年に農水省の事業の一環として民間企業が開発。17年に現在の日本GAP協会が設立され、この協会によって運営されている。19年にはGLOBAL GAPとの同等性認証を取得している。今年10月末現在の認証農場は全国で215となっている。
日本GAP協会は従来4名の理事で運営されていたが今年の第3期通常総会および臨時総会で、イオン、イトーヨーカ堂、ダイエー、CGCジャパン、日本生協連などの代表さらに和田正江主婦連副会長を理事に、元農水省事務次官の高橋政行氏を理事長に選び、従来の生産者主体の運営から、小売流通業者や消費者代表を加えた運営に切り替えた。
そして10月に「新しい農場管理の手法であるGAPを活用し、魅力的な農場を共に創りましょう」を柱とする「基本方針」と「日本の標準的なGAPを開発」することなど5つの「行動目標」を発表した。
「イオン―GAP」。国内大手量販店イオン(株)が運営するもの。イオンは平成14年にGLOBAL GAPに準じた自主品質管理基準「A−Q」(イオン農産物取引先様品質管理基準)を開始。18年にはGLOBAL GAPに小売業者会員として加盟、その年の12月に「A−Q」の生産面に対する規範で「イオン―GAP」を策定した。
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◆産直品の品質を確保する生協GAP
「生協の青果物品質保証システム」(生協GAP)。平成14年ころ生協の産直商品での偽装が相次いで発覚したため、産直基準を見直すなかで提案されたもの。「食に対する信頼回復」と「たしかな商品づくり」を実現するために、産地と消費者が互いに品質や仕様に責任をもち、確認と検証ができる関係を構築しようとするもので、生産者・生産者団体、流通、小売の4段階で守るべき規範を定め、生協産直での青果物の品質を確保しようとする取り組みだ。
現在、青果物の「生産者・農家編」「生産者団体・JA編」があり毎年改定されているが、今年初めには流通・加工・センターにおける規範である「適正流通規範2008年版」(GMP、GDP)が策定され、一歩、食卓に近づいた。日本生協連では、いまは青果物だけだが、米について検討を進めている。そしていずれは産直商品だけではなく農産物全体に適用できるものにしたいと考えている。
これらの他に「県版GAP」など。国のGAP推進政策を受けて行政やJAグループが連携して県単位で作成したものや、地元農産物の信頼確保・品質向上などをめざして自発的に取り組まれているものなどさまざまな取り組みがある。
いまGAPは(下)