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業務用・加工用野菜(2)

鉄コン出荷に意欲的に取り組むキャベツ生産者
JA愛知みなみ常春部会

前回、国内産地に業務用・加工用野菜への取り組みが求められている背景を含めてこの取り組みの必要性を藤島廣二東京農大教授に聞いたが、今回は実際に野菜産地ではどのような取り組みがされているのかをキャベツの大産地であるJA愛知みなみに取材した。なお、次回は静岡県のJAとぴあ浜松の取り組みを紹介する。

◆作付面積800ha年間500万ケース出荷

 愛知県南部、渥美半島にある田原市を管内とするJA愛知みなみは、三方を海に囲まれた半島ということで、潮風による塩害を受けやすいが、暖流の影響で冬期も温かく年間平均気温16℃という恵まれた気候条件を活かした意欲的な農業が営まれている。
 JAの販売事業高は全国でもトップクラスの約510億円(19年度)。その5割が花き類、3割が青果農産物、2割が畜産だ。青果物ではキャベツが45億円弱を占めているが、20年度は中国産冷凍餃子事件で国産キャベツへの需要が増えたことなどもあって50億円になったという。
 JA愛知みなみのキャベツ生産部会は、渥美半島が「常春半島」とも呼ばれることから「常春部会」と称している。部会員は464名、約800haの栽培面積で、10月から6月まで冬系キャベツと春系キャベツの2期作を行い500万ケース(約5万トン)出荷するという全国でも有数のキャベツ産地だ。

◆コストを抑制し、面積拡大する余裕も

収穫作業する冨田さん ここでは3年前から常春部会の冨田信也部会長を始めとする20名の生産者が、鉄コンテナー(鉄コン)による業務用キャベツの契約出荷を行っている。
 現在、1次加工業者4社と契約して出荷していると同JA青果農産部青果販売課の高瀬重彦考査役。鉄コンでの出荷は12月から6月末までで、ほぼ2000トン(1日平均10トン)だ。実際には10月から出荷が可能だが、その時期は契約先が別の産地と契約しているから12月からとなる。
 鉄コンは写真のように300kg収納できる。そしてこのまま出荷するから、段ボールが不要になり、当然段ボールを組み立てたりキャベツの箱詰めやテープで蓋をするなどといった作業がなくなる。
 収穫時にも規格に合わせて選別する必要がないので畑から「全量収穫」できる。さらに、段ボールなどでの出荷だと、1箱ずつトラックに積むための時間と労力が必要だが、鉄コンはフォークリフトで積めるので時間も労力も大幅に減らすことができる。

◆「5割を鉄コンにしてもいい」

300?入る鉄コン。2段重ねで600?強の出荷となる。 つまりかなりのコストダウンが可能になったということだ。そして生産者には「時間に余裕が生まれる」。だから「もっと面積を増やしたい」と冨田さん。現在、8ha強キャベツを作付けしその内の3割くらいが鉄コンの契約栽培だが、作付面積を増やし「5割を鉄コンにしてもいい」という。
 業務用の契約は、出荷時期(期間)と数量(重量)そして単価が基本だから、1玉の重量が重い方がいい。栽培暦は一般のキャベツと同じだが、株間を広くししっかりと巻いた大きなキャベツにする。そのために肥料もやや多目にする。そうした技術的なことはほぼ確立した。あとは「業務用に適した品目の選定だ」と常春部会栽培役員の伊藤則行さんはいう。

◆課題は実需者の態勢整備では

 この地域には意欲的な生産者が多いので鉄コンによる契約栽培はまだまだ伸びるだろう。しかし、簡単にはいかないと高瀬さん。なぜなら鉄コンは、常春部会が出荷しない時期は、他の産地で使うなど効率的に運用するために産地ではなく、1次加工業者など相手先が持つのが普通だが、鉄コンに対応できない業者が多いからだ。そのため業務用であっても段ボールや20kg入りのプラスチックコンテナで出荷しているものもあるという。
 産地に意欲があっても相手先がその意欲に応えられる態勢がなければ、空回りしてしまう。一定の地域内に拠点を設け、そこで鉄コンで荷受して小分けするなど、実需者サイドの工夫もこれからは必要ではないだろうか。

(2009.06.01)