◆生食用大根を漬物用販売に
業務用や加工用野菜の展示商談会のようなイベント会場を訪れると必ず見かける顔がある。静岡県のJAとぴあ浜松もその一つだ。
JAとぴあ浜松が加工・業務用野菜への販売を始めたのは平成18年からだと村越英雄営農販売部特販課長はいう。JAには130品目くらいの青果物があり、展示会ではその時々の旬のものが展示されているが中心は大根とキャベツだ。
前回紹介したJA愛知みなみは年間通してキャベツを生産・販売していたが、ここでは馬鈴薯の後作として大根やキャベツが栽培されていることが大きな特徴だといえる。浜松市の三方原台地を中心とした赤土地帯で栽培される三方原馬鈴薯は、表皮が薄くつるつるとしてきめが細かく甘味のあるホクホク感が特徴で、市場の評価も高いブランド品だ。
馬鈴薯はJAの共販率が高いが、その後に作付けされている大根やキャベツはJAへの出荷率が低い品目だった。大根は漬物用が中心だったが、漬物需要が減り、大根生産は縮小せざるをえない状況になっていた。
そこでJAでは、サラダなどの加工用需要を開拓し、生食用大根を生産してもらうことにした。さらに従来は取り引きのなかった漬物加工業者に、生食用の青首大根を漬物用に供給することに成功し、19年は9万本を納入。20年には2倍強の20万本を納入することに成功した。今年はもう少し増えるかもしれないと村越課長。
馬鈴薯はトンネル栽培とマルチ栽培があり、トンネル栽培は正月明け早々の定植、マルチの一番遅い作型でも3月中旬の定植だから、大根の収穫は遅くとも2月初旬までに終えなければならない。
◆収穫重量を増やし鉄コン出荷する加工用キャベツ
キャベツの場合は、馬鈴薯がメインの地域は1月までの収穫となるが、湖西などでは4月中旬まで出荷する畑もあるという。キャベツの出荷先は、外食チェーンに直接というのもあるが、中間業者が多い。中間業者を通じて弁当屋などに納入されている。
業務用と加工用では栽培の仕方が違う。業務用キャベツの場合には、市場出荷するものと同様の品質や葉の巻き方が求められ、ある外食チェーンの場合には、出荷して納入されるまでの品温が5?7度以内とされ、出荷時にJAで検温して確認、納入直後は相手先が検温して、規定温度内であることが確認されるという。出荷の形態は段ボールかプラスティックコンテナー。
加工用キャベツは、株間を通常より広くし、大きく育てる。そのことで通常は10a5トン強収穫するのを、7トン収穫できるようにする。「本当は8トンくらい収穫したい」と村越課長は話す。出荷は300kgの鉄コンテナーを使う。単価が安くても量が多いことと手間をかけないので採算は合うという計算だ。
加工用はミックスサラダやメンチカツ、ハンバーグの具材に使われるケースが多い。
◆実需者のニーズを直接掴み販売提案する
JAの販売事業は200億円を超える。そのなかで特販課の扱い量は「微々たるものですよ」(村越課長)だが、いままでJAに出荷されていなかった大根やキャベツがJAを通して契約販売されるようになった意味は大きいといえる。「契約さえとってくればキャベツはまだ伸びる」というように生産者の関心も高い。
だが「市場を通さない直接販売を目的にしているわけではない」という。目的は「生産者のためにどれだけ安定した価格で販売できるのか。その一つの手段が契約で、生産者が納得して再生産できて、“よかった”といってくれればいい」。だから市場を通した契約もあるし契約の形は一様ではないという。
JAとしてのもう一つの狙いは、高齢化や後継者不足で増えている遊休農地で「元気のある人に生産してもらうこと」だ。だが「いま5町歩やっている人に、細かい選別が必要な共販出荷と同じ方法でさらに5町歩というのは無理」だから、あまり手間も経費もかけずに生産し出荷する加工・業務用生産をしてもらう。つまり「空いている畑を有効利用して、地域農業を振興しよう」ということだ。
そのためには、村越課長以下の特販課のメンバーが、「直接、現場に行って実需者の情報を掴み生産者に伝えるとともに、販売提案をする」ことで、事業を拡大し生産者の安定的な所得を確保しようとしている。