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生協の経営概況

暮らしの危機・事業の危機に直面した地域生協

 去る6月18〜19日に日本生協連の総会が開催されたがその資料として「最新 6月15日版『2008年度生協の経営統計』の推計」が配布された。現在の生協の状況を知る最新のデータなので、その内容を紹介するとともに若干の分析を試みた。

◆信頼は“揺らいだ”が“崩れ去り”はしなかった

closfo0906250101.gif 2008年度の日本生協連加盟会員数は、608生協でその組合員数は2524万人となり、前年度より2.2%の増となっている。また、総事業高は3兆4112億円強となっている。そのうち生協の中核をなす地域生協についてのみまとめたのが表1だ。
 地域生協の商品供給高は2兆5902億円と前年度を僅かに下回ったが、餃子中毒事件をはじめ商品事故が多く「苦労した年だったが、組合員は増えているし、供給高がほぼ前年並みだったということは、よくがんばったといえる」し「生協に対する信頼は“揺らいだ”が“崩れ去った”ということではない」と矢野和博日本生協連専務は評価する。
 だが、経常剰余金をみると07年度の57%と大幅に落ち込み経常剰余率も1%に減少している。経常利益減少の要因としては、08年度前半は原油など原料価格の高騰の影響、そして秋以降は世界的な経済危機の影響による消費引き締めと小売業界の単価引き下げ競争などで供給高が落ち込んだためだといわれている。

◆店舗事業の赤字構造はさらに深刻化

 東北のみやぎ生協では、供給高は前年度比0.1%減の1029億9000万円だったが、経常剰余金は7億6200万円の黒字から16億6300万円の赤字に転落した。赤字にはなっていないが、ちばコープは経常剰余金が、07年度の23億円強から10億円強に半減した。ちばコープは供給高も前年度比4.6%減少しており減収減益だ。コープながのも経常利益は07年の51%減と半減した。
 供給高を前年並みあるいは前年より伸ばした生協もあるが、そうした生協でも原材料高騰と低価格競争の影響で経常剰余金を大幅に減少させている
 業態別にみると、店舗事業は08年度も前年実績を確保することができずコープとうきょうなど一部の生協を除けば「全国的には赤字構造がさらに深刻化」している。
 生協の店舗事業は05年度に1兆円を下回って以降、10億円台を四捨五入すれば1兆円だったが、08年度は売り場面積は拡大したが、ついにそれにも届かなくなってしまった。

closfo0906250102.gif◆鈍化した個配事業の伸長率

 一方、無店舗事業は前年並を確保した。しかし、いままでほぼ2桁の伸びを示してきていた個配事業が07年度比104.6%と5%以下の伸長率となった。近年の生協の事業を牽引してきた個配事業にもやや翳りが見えてきたのだろうか。日本生協連は個配1兆円を目指している。今年どうなるか注目したい。
 個配という業態を開発し牽引してきたパルシステムでも、上期は原料値上げなどによって一部商品について値上げをしたにもかかわらず「107.6%成長で進捗」したが「10月からは受注金額は低下し、1月は前年単月で前年比割れ、1〜3月は前年比100.6%」になり「不況状況で消費マインドが一気に低下し、利用点数が落ち込み、下期に失速した」(パルシステム連合会通常総会議案書「08年度取り組み課題総括」)。
 地域生協全体では組合員が増えているが、表2表3のように店舗ではほぼ07年と同じような利用点数・金額となっているが、無店舗では1人当たり利用点数も利用金額も07年よりも落ち込んでおり、それを組合員を増やすことで補うという構造になっている。こうした傾向は表1gをみても分かるように、最近の生協の特徴だといえる。

 

◆コープ商品は6%の伸び PBが競争の中心

closfo0906250103.gif 表4は日本生協連の商品事業の概要だ。供給高は4233億円と07年度比106%と伸長している。しかし、餃子中毒事件の後始末などのため経常剰余金は07年度比12%の5億円となり、税引前当期剰余金では3800万円の赤字計上という厳しい決算となった。
 地域生協の供給高がほぼ前年並みにもかかわらず日本生協連が提供するコープ商品が106%と伸びていることについて矢野専務は「危機のときこそコープ商品を大事にしようという組合員・会員生協の高い志が6%の伸びであり、敬意と感謝」と語った。
 さらに、量販店を含めて、NB商品は原料価格の変動で価格が動くので、PB商品を中心とした流れになっている。これからも「PB商品が競争の中心になる」という認識を示した。

◆価格引下げの“ツケ”は誰が払うのか

 それは言葉を変えれば、「暮らしの危機」に直面し消費が低迷するなかでは、「暮らしを守る」ために「低価格」路線によって量販店などと競争をしていくということなのだろうか。そのとき価格を下げた「ツケ」は誰が払うのだろうか。生協が負担するのか。それとも生産者やメーカーや納入業者なのか。
 後者だとすれば、各企業は価格値下げ分を吸収するための一つの方法として、賃金カットやボーナスカットさらには人員削減など人件費削減に走る可能性は大きい。そのことは、そうした企業などで働く生協組合員の収入をさらに減らすことではないだろうか。
 つまり生協組合員は低価格を追求することで、いずれはそのツケを自ら払うことになるのではないだろうか。暮らしの危機と生協事業の危機に直面して、改めて生協のあり方が問われている、そういう変革のときにきているように思えるが、どうだろうか。

(2009.06.25)