韓国農協中央会は、ご承知のように指導、経済、金融、共済の総ての事業を行う総合的な農協全国組織であり、韓国の経済の発展に大きく寄与している。
ソウル市内のビジネスセンターに、堂々たるビルを所有し農協の中央本部の威容を示している。農協ビルのフロントに「農業博物館」が設けられているのが特徴である。『AGRICULTURAL MUSEUM』と英字の表示も掲げられ、農協関係者のみならず一般市民に広く開放されている。年間25万人以上の入場者があり、学童教育(入場者の60%が学生)にも活用されているそうだ。
館内の展示物も非常に豊富で、その整然とした構築設備に驚嘆した。たとえば、人類(韓国民族)古代からの農のなりわいや水稲の作付けの歴史、石器時代からの農具の進歩など現代の農業経営に至るまで、丹念に農業の発展を解明する展示系列には感服せざるを得ない。
金在均館長の懇切丁寧な案内で館内を一巡したが、古代からの朝鮮における農村の祭事についてのコーナーでは、農を国の基とする韓国人の心情の深さに感じ入った。李王朝時代の王の「先農祭」における「親蚕礼」や「親耕」の儀式などに象徴されるように「先農檀湯」の恩想の潮流を見ることができた。昔の村落杜会の約束事を「【契】約」というが、農【契】文に「農者天下之大本」の字句が大書されており深い感銘を覚えた。
※原文の「【契】」の字は旧字体です。