私は昨年6月、JAいずも専務を退任し職員、参事、役員と通算50年の農協人生の幕を閉じた。退任して1年を経過した今日、釈然としない疑問がどこかで残るのは私だけではないと思う。
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永らく積み上げてきた協同の力、そして組合員と共に培った「農協運動の精神」を、自らの退任と同時に放棄していいのか? 幸いにして協同組合経営研究所での役割があっての発想であったが、全国のJAには、常勤役員として先頭に立ち、この難局を協同組合一筋で歩んでこられた人達は数知れないほど大勢いるはずである。
そこでJAはだのの松下前組合長と、ある研究会でご一緒させてもらった時の話で、一年前にさかのぼるが、「私達の任務はこれで終わることなく、一生農協運動に身を投じることを再認識すべきだ」と意見が一致。JAみやぎ登米の阿部元組合長、JAいわて中央の熊谷前常務とともに農協協会のお世話になり「共存同栄」ネットワークの結成に繋ぐことが出来た。
時に「2012年国際協同組合年」が国連で決議された。レイドロー報告『西暦2000年における協同組合』に示され、いま組織形成がなされるべきである協同組合地域社会の建設は、まさに今日的課題を示唆している。
昨秋の第25回JA全国大会でも「市場原理主義からの脱却」「大転換期における新たな協同の創造」が決議されたが、いま、協同組合にとって重要な局面を迎えていることを事実として捉えなければならない。
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農業協同組合は世代交代の流れが進み、また組織の硬直化による「トップダウン」方式が強化され、組合員も職員も「指示待ち症候群」の様相を呈している。
本来、協同組合組織は限りなく「ボトムアップ」方式によって、自らが地域を掘り起こして協同の輪を広げるべきである。この重要性を再確認すべき時が来たと言えよう。
協同組合地域社会の建設は、まさに「人づくり」そのものでもある。協同組合理念とその協同の魂が後世に繋がり、より豊かな協同の社会が建設できるよう「共存同栄」ネットワークに全国JAのOB諸氏が結集し、その役割を微力でも果たそうではありませんか。