先ず、「戦略」とは何かである。孫崎享氏の近著「不愉快な現実」(講談社現代新書)の戦略とは何か、が判り易い。同書P198で(1)人、組織が死活的に重要だと思うものを対象とする。(2)死活的分野に明確な目標を設定する。(3)目標を実現する道筋を考える。(4)相手の動きに応じて自分の最適な道を模索する。(筆者が要約)とある。
孫崎氏のは国家の防衛問題の戦略論なので死活的という表現となるが、農協問題には最も重要な事柄と読み替えればよい。
戦略を立てるには「強み」と「弱み」を明らかにすることから始める。農協に関する現状分析は巷にあふれているが「弱み」はこの際棚上げとする。「強み」はなにか。
第一、農家組合員の知的水準の高さ、高品質の農畜産物を生産する技術力である。
第二、農協の組織、人材、施設である。総合性と専門性を組織が分担し相互に補完している。人材は農協組織の各段階と競争関係にある業者、総合商社と比べても十分対抗の出来る人材が揃っている。特に連合会は販売、購買、信用、共済、指導のどの分野も競争相手となる商社、銀行、保険会社と比較をして国内はもとより国際競争の舞台でも負けていない。
これを戦略に活かすには、SWOT分析による「強み」を最大限に活かして、「弱み」を最小限にするようリスクを避けることである。販売、購買の事業の各品目をそれぞれ組織のタテ線で結び、各段階の役割を明確にしてそれぞれが持っている施設をフル稼働し付加価値を付けコストを下げて競争力を付ける。
アメリカ、オーストラリアのような先進的農業国であろうが、人件費やコストの安い途上国であろうが品質と価格で負けない対抗策を立てる。一般論で日本の農業・農協を論じるとマイナスの「弱み」が前面に出される。コメやリンゴ、牛肉など個別の品目について競争相手と比べると「強み」が判る。ここで戦略の出番となる。
孫崎氏の(1)〜(4)を個別の品目に当てはめ、産地毎に戦略を立ててみる。これまで農協組織がやっていたこともこの際棚卸をして、よいところだけを選択する。「弱み」は無視してプラスだけを取り上げる。消費者が応援してくれれば農協への世論もガラリと変わる。農家も農協も元気が出る。