コラム

目明き千人

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【原田 康】
「6次産業化に異議あり」

 第6次産業という経済学辞典のどこを探しても見当たらない産業化がもてはやされている。第1次産業が今のままでは衰退をしてしまうので第2次、第3次産業と一緒にして、足しても掛けても6となる第6次産業なるものにすることである。あたかも6次が高度で、1次が時代遅れのような印象となる表現は農林漁業者に対して失礼である。内容からみて「第1次産業からの発展、拡大」が適切である。

 第6次産業という経済学辞典のどこを探しても見当たらない産業化がもてはやされている。第1次産業が今のままでは衰退をしてしまうので第2次、第3次産業と一緒にして、足しても掛けても6となる第6次産業なるものにすることである。あたかも6次が高度で、1次が時代遅れのような印象となる表現は農林漁業者に対して失礼である。内容からみて「第1次産業からの発展、拡大」が適切である。
 ユーザーの需要に合わせて生産、加工、販売まで全部の工程、流行の言葉でいえばサプライチェーン・マネジメントはすでに昭和30年代から農協組織が取り組んできている。小規模な農家の多様な農産物を農協の集荷場に集めて規格別に選別をして、品目に合わせた加工により付加価値をつけ、需要者が求める品質、企画の商品に作り上げて契約通りキチンと納品をし、代金を農家に清算する仕組みをつくり上げている。
 6次産業化の提案で初めて気が付いたように云っているが農協組織がとっくの昔からやっていることである。特に「流通革命」の言葉が出来た昭和37年代には大型量販店が急速に拡大をして個人の小売店が閉店に追い込まれ、「問屋不要論」が大手を振って登場し、さらに貿易の自由化が追い打ちをかけた。何が起きたか、量販店、チェーン店の安売り競争に対応するために第2次産業の食品加工も大型になりコストを下げるため原料に輸入品を使うようになった。
 農協はこのような2次、3次産業の構造変化に対して量販店、外食産業の必要とする商品を輸入品に負けない条件で国産の農産物を供給出来る仕組みを作った。単協から経済連、全農がそれぞれ必要な集荷、選別、貯蔵、加工、販売の施設を作り全国レベルでエンドユーザーの要求に対応のできる仕組みを作り上げている。現在はインターネット、宅配など便利になったので個々の農家や農業法人、会社も工夫次第で販売が出来るが、巨大な多国籍企業が国境とWTOのルールを無視して金融も抱き込んで流通を牛耳っている中では限界がある。
 農協は総合事業で、准組合員が増え農家だけでない地域全体の振興に責任を持たなくてはならないので、上に挙げたような事業を50年もかけてシコシコ積み上げているがなかなか正当な評価を得るところまで行っていない。
 架空ともいえる第6次産業化がもてはやされるのはおかしなことである。

(2012.10.19)