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農政寸評

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【森島 賢】
林新農水大臣に期待する

 この欄は、広く農政に関わるニュースを速報し、それに寸評を加えたものです。

 新しい農水大臣に林芳正(参、山口)氏が就任した。同氏は、これまで、内閣府の経済財政政策担当の特命大臣や防衛大臣を歴任してきた。専門分野は経済政策のようで、これまで、農政にそれほど深くかかわったことはない。
 同氏にとって、新しい分野であるだけに、新鮮な農政の改革を期待したい。それが、今後、同氏の経済政策に重厚さを付け加えるだろう。

 同氏のHPをみると、同氏の政策の基本は「絆社会」の建設にある。これは「無縁社会」に対立して、それを否定する政策だろう。「協同」に高い価値をおく政治といってもいいだろう。
 農村には、「絆社会」が残っている。市場経済によって薄められたとはいえ、まだまだ色濃く残っている。その中核に農協があって、「無縁社会」になることを防いでいる。
 このことを、農水大臣になった機会に現地をまわって、よく見てもらいたい。それが、今後の同氏にとって、貴重な経験になるだろう。

 同氏の経済政策の基本は「国内雇用」の拡大にある。都市だけでなく、農村でも、いま深刻な雇用縮小と、それによる不安に見舞われている。
 農村での農商工連携もいいし、農業の6次産業化もいい。だが、それよりも重要なことは、農村で新産業を興し、農村に新しい雇用の場を骨太に創出することではないか。そして、農村で豊かに暮らせる地域に立て直すことだろう。
 それは、かつての農水大臣が尽力した政策だし、同氏が最も得意とする政策分野である。

 同氏は、昨日の記者会見で、TPPについては、「いついつまでにどうこうするということよりも…きちっと議論する」といっているし、戸別所得補償制度については、「現場が混乱しないことが大事」といっている。
 これらの影響を、農村の現場で、つぶさに見ながら、じっくりと考え、機敏に政策を立ててもらいたい。それは、同氏にとって、政策の陶冶に生かされ、今後、大きく羽ばたく糧になるだろう。期待したい。


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(2012.12.28)