出張先でのわたしの楽しみのひとつは、直売所へ寄って地元の食材や加工品を調達することです。土産物として有名な店のお菓子や加工品を求めることもありますが、知人へのちょっとした手土産で、鼻たかだかになれるのは農家手作りの漬け物や、おだんご、お煎餅です。直売所は、地域の方々だけが利用する場所ではないのです。
いくつかの直売所を探して、通り過ごしたことがありました。お目当ての人はもちろん、偶然見つけて入る人のためにも目印になるものがあれば、買い手にとっても、売り手(作り手)にとっても助かります。
シンボルを見つける
すでに営業しておられるグループも、客観的に他者の目で店頭を見まわしてみて下さい。いかがでしょう。なにか雑然としてはいませんか。看板は目立っていますか。目を引くものがありますか。
他者の目を持つということは、なかなか難しいのですが、何も知らずに通りがかって立ち止まることができるか、離れた場所から見ても、オーラを発しているかどうか、グループの方々と実験してみてはいかがでしょう。
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わたしが街おこしのお手伝いの時に提案するのも、ここからスタートです。すでに認知されているから……、そんな、もったいない。美味しいものをひとりでも多くの方々に食べていただいて、元気になってもらうために、店頭を美味しい顔にしましょう。
極端な言い方をしますと3分の1は、ふさいで店名と、直売所であることのわかる表示のみに。店頭はシンプルでダイナミックな方が、人目を引きます。ふさぐものは布でもボードでもよいでしょう。ひさしが深いところであれば、軽い立体のものをぶらさげるのもいいですね。例えば提灯。大きなものが手に入るようなら、女性のにっこり笑顔のイラストなど描いて。招き猫ならぬ、招き笑顔です。似顔絵は単純な方が目立ちます。下げた提灯のうしろは、例えば、深い藍色のボードにするといいですね。店頭にメリハリがつきます。
シンボルはあった方がいいですよ。テレビや新聞、雑誌等に紹介された時の印象度が違います。
店内にもポイントをひとつ
壁面にパッチワークの作品や、野菜、加工品の情報が貼ってあるお店に入ると、ワクワク楽しくなります。ただし、あっちにも、こっちにもでは結局、わずらわしくて読まなくなってしまいます。壁面の間(ま)の取り方にも工夫が必要です。
ジャンルを分けて整理し、それぞれのコーナーにまとめましょう。
広い壁面のあるお店なら、壁の一部をギャラリーにしてもいいですね。子どもたちの絵を展示したり、絵画クラブの方々の作品展や、俳句の短冊が並ぶのも楽しいものです。壁面に変化があるとお店自体がいつまでも新鮮でいられます。無理のない程度で、楽しみながら企画されるといいですね。楽しいって、自然に伝わるものなのです。そしてどんどん好循環していく。楽しい「気」の集まるところに「人」は吸い寄せられ、相互のエネルギーが、ますます高まっていくのです。
最初は参加メンバーの家族の方々に協力してもらってもいいかもしれませんね。自慢の得意技を披露してもらうなど。直売所がさらにアットホームになり、地域のホットステーションとしてかけがえのない場所となるに違いありません。
主役を引きたてるには…
直売所で買い物をしていて残念だと思うことがあります。野菜は生き生きとして輝き、加工品はいかにも美味しくできましたという顔をしているのに、プラスチックケースに入れられていると3割方、器量が落ちます。自然の色を引き立てるには自然の素材の籠、木箱がふさわしく、美味しい顔の機嫌がますますアップしてくるのですよ。
写真左はわが家で使用している野菜や果物用の籠です。竹やあけびづるで籠を作っている方々の品を紹介、あるいは販売しながらディスプレイにも使われてはいかが。木箱はどこからか分けてはもらえませんかね。写真右はわたしの実家の玄関内の郵便受けに臼(うす)を使った例。インテリアとしても存在感があります。秋田県横手の米屋さんへは臼の中へ籾殻を敷いて卵を売るよう提案。好評です。納屋に眠っている農具、枡や桶、御櫃(おひつ)を探し出してディスプレイに。直売所が農の文化再発見の場にもなれます。