待ちに待った写真が届きました。おおおっ! と思わず声が出、ニヤリ。やってくれますネェ。可笑しくて可笑しくて。こんな可笑しさ、久しぶりのことでした。先月、予告しました「作業所」のなかま達の写真です。いいですね。
「自分たちのこと、書きたいって言っている、林さんて、どんな人?」と、のぞき込まれているようです。「なかまの家」は2年前に2つのグループにそれぞれ独立。張り子の面づくりは、NPO法人「わいわい・かんとりー」が楽しみながら続けていました。
なにもないのがとてもいい!!
わいわい・かんとりーは山形県飽海郡遊佐町にあり、関根信明さんら3人のスタッフと8人の通所メンバーで構成されています。一般就労を目的としていて、関根さんいわく、「社会人として成長できるお手伝い」としているのだと。同じ庄内平野の酒田市出身で、遊佐に移って感動したのは、なんと「なにもないところ」ですって。電話の声が笑ってました。
そうなのです。わたしが今年2月に「エキプ・ド・遊佐」の土門玲子さん、桜庭あい子さんに案内された遊佐の大地の清々しいこと。眉をひそめる広告や看板が見あたりません。月光川ダムの上、湧き水を求める人が集まる三ノ俣(みつのまた)には農林漁業体験実習館「さんゆう」があります。そばうち、豆腐、漬物、笹巻きづくり等が完全予約で体験できるとのことで、そちらを目指しました。途中、思わず車を止めてもらったのは、高瀬小学校。コンクリートのモダンな校舎に広い校庭。なんと学校の周囲には石を積み重ねた水路。そして水車。氷結の美しいこと。水路の際には「美しき童の里」の絵看板がたてられていました。子どもたちが、こうあってほしい、と描いた夢を、大人たちがこのような形で実現したのです。消費経済のまっ只中で育つ町中の子どもたちの目に飛び込むのはけばけばしい広告ばかり…というに。
ともに学ぶ
関根さんの次男、現在23歳の如水(ちひろ)さんは小学校2年まで普通学級で学んでいます。クラスの仲間たちは、「ちひろ君、今日、こんなことできたんだよ」「ボクこうやって守ってあげたんだ」と周囲の大人たちの心配をよそに全身で彼を受けとめ、仲間としてともに、時間を重ねていました。関根さんは2年間のクラスメートへのお礼に、歌手の宮沢勝之さんのコンサートを企画したそうですが、客数50人のつもりが、なんと500人を超える方々が、つめかけたそうです。その後、コンサートは恒例に。平成18年のタイトルは「ありのままのわたし・ありのままのあなた」。他者との出会いの中で自己を発見された方々が多かったことでしょう。
これしかできないんだよ。しかし…
わいわい・かんとりーでは就労のための技術をみがく一方で、陶芸や面づくり、植木ポット等のものづくりもしています。
わたしが大ファンになった面は、土台を「かんとりー」を利用するメンバーが作り、面の絵は、最初、上山市(かみのやまし)の六幸民芸の木村蔵六さんが手がけられました。なんとかならないものかと持ち込まれた土台は、七福神だといわれたが、???のかたち。首をひねりながらも、創造力がかきたてられたとおっしゃる。木村さんから、「形をみて感じるままに描くのがよい」と手ほどきをうけた川俣千佳子さん。前回の写真の面は、すべて彼女の手。現在の描き手は高橋こずえさん。
かかわる人たちが、ゆったりと、才をねらわない。わたしに届いた円陣を組んだ写真のように、土台の形と質が、さぁて、どうするの? と問いかけてくる。筆を持つ方々は、にこにこしながら、面と対話されていたのでは…。
わたしは直売所で、ぐいっと引っ張られるように、面へと手をのばしたのです。これらが、なんとも言えぬ豊かな時間を与えてくれるのは何故でしょうね。