山形県鶴岡市藤浪、国道345号線沿いに広い敷地をとって、産直「楽々(らら)」はあります。近くを流れる藤島川は、出羽三山のひとつ、月山を水源とし、庄内平野の真ん中を走って下流で最上川に合流、日本海へ達します。
広々と見晴らしのよい田園風景の中、「四季の里、楽々・らら」は忽然と姿を現しました。イメージカラーはオレンジ。道路際に立つ看板の天辺には大小のトマトが、笑顔でお客を招きます。広々とした駐車場の先に目指す建物が…。(写真1)
地域のホットステーション
建物の配色は、壁が肌色、アクセントにオレンジ、茶、紺。中央入口にはみかん色の大きな日除けのれん。なんともアットホーム。わたしが立ち寄ったのは本年6月16日。庄内町のオリジナル米焼酎「庄内の雫(しずく)」発表試飲会の翌日。梅雨の晴れ間のさわやかな天候でしたが、「楽々」の外観には、ここを運営する方々、作り手の方々のみなさんの熱く、暖かい想いを感じました。
突然の訪問でしたのに、メールで「楽々」の全景や、人気商品の写真を送って下さった鶴岡市藤島庁舎産業課エコタウン室の阿部知弘さんにお会いすることができました。
「女性の方々が元気でアイディアあふれる加工品が人気です」と。地域にかかわれる仕事が楽しくて仕方がないご様子。
圧倒!! 絵手紙
米、新鮮な野菜、味に工夫の加工品…は無論ですが、「楽々」という命名の通り、楽しい展示が壁一面です。(写真2・3)
「絵手紙のモットーは力いっぱいヘタにかこう」とは小池邦夫さん。なるほど言い得て妙。「温かい土の中で、色彩豊かな物を育んで、地上に贈り出してくれる自然の力に感動して、野菜や身近にあるものを、ひとつひとつ、よく視て、描かせてもらいました」と山口千代美さん。紺色の台紙の上に、お二人の作品がびっしり貼られています。土の恵みの野菜たち、藤島の藁工芸品の数々が生き生きと描かれ、圧倒されます。ふと心配になったのは、これだけの数の作品、いつ頃まで展示されるのかしら…と。展示は、一度にがんばりすぎるより、定期的に入れ替えた方が効果的です。絵手紙に限らず、同じものが長期にわたって飾ってありますと、新鮮が売り物の直売所にとっては、マイナスです。期間は長くても1ヶ月を目安としてはいかがでしょうか。例えば同種類の展示であれば、貼り替える時には台紙の色もガラリと変えましょう。展示替えがはっきりとわかるようにすることが大切です。また、ギャラリー的要素の展示物は、商品との距離をおいた方がいいですね。買い物と鑑賞は別物、それぞれじっくり落ち着いて堪能して頂くのも大切なサービス。居心地のよい空間には、自然に人が集まります。
主役と脇の差をつける
思いがけない大漁旗に引き寄せられ、コーナーへ(写真4)。なんと新潟との県境、海辺の町、鼠ヶ関(ねずがせき)からの魚が直送されていました。庄内平野のど真ん中、それも農協の直売所で新鮮な海の幸に出会えるとはびっくり。大漁旗は見ているだけで力が涌いてきます。コーナーの目印にはうって付け。なのにちょっと残念。旗の下の「鼠ヶ関直送!!」の張り紙の文字の色(青と!!は赤)、大きさともにがんばり過ぎで旗が実は目立たなくなっているのです。文字の色を黒に、紙の面積を3分の1にすれば、旗の色がきれいに際立って迫力が出ます。実はどこの浜からだろう? と思わせる方が、大きな引力が働いてコーナーへ足を運んで下さるのです。アイキャッチの主役と脇の差をはっきりとさせるとメリハリのきいた売り場になりますよ。