昨年末、本年2月とわたくしは故郷、富山県にて講演してまいりました。ひとつは高岡市福岡町商工会女性部で、風呂敷をテーマに町づくりの話。先月は小学校2年生まで暮らした魚津市で富山県生活協同組合主催の生協の取引先業者の方々へ、新商品のネーミング、パッケージデザイン等の話を。
マイバッグ以上のすぐれもの風呂敷
風呂敷はいまや、たいへんなブーム。四角四面の布だからこそ、融通無碍(ゆうずうむげ)にたいていのものを包んでしまう。
福岡町では、包み方のワークショップと包む以外のお役立ちのあれこれを紹介。そして町づくりのひとつの方法として、風呂敷を使ってのウィンドウディスプレイ。女性部が働きかけての駅舎での展示等々の提案。マイバッグには不可能な、使用方法の数々。そこには包み方の知恵と、姿の美しさがありますので、人目を引くのは必定、若い方々へも浸透するのではないでしょうか。
直売場でも風呂敷アート展
これからの直売所は、食べものを売るだけではない、付加価値についても考えるべきではないかと提案をひとつ。
農家に代々伝わる藍染めの名入り、家紋入り、祝いの柄を染め上げたもの、端切れを縫いあわせたパッチワーク、補強と美しさを兼ねる刺し子等々の風呂敷展はいかが。繕い(つくろい)のあるもの等々も、モノを大切にした想いが伝わります。地域の方々に呼びかけて展示されてはいかがでしょう。お借りした風呂敷には、もちろん持主名をカードで添えます。また現代の風呂敷で包み方の展示も。西瓜包みは、ビーチボール等で代用し、数個の吊り糸で下げても目を引き、楽しいですね。
展示はレジのコーナーのそばに。悪戯などされぬよう心配りも必要です。(写真1)
見せ筋と売れ筋のコラボ
売り上げの高い店の商品展示の方法のひとつに「見せ筋」と「売れ筋」があります。例えば家具売場で、まっ赤な皮のソファーにクッションが置いてあると、なぜかクッションが売れるそうです。ソファーの色や材質も含めての存在感で目を引き、手頃なクッションへの購買意欲をそそるというのです。直売所ではそこまでのあざとさは不要ですが、地域の「農」の文化とのコラボレーションは是非、実現していただきたいですね。
昔の農具や、台所の道具等は、使い込まれての「用の美」があります。地域の農のミニ歴史館コーナーができるのではないでしょうか。3カ月程で展示を入れかえ、記録なども取っておかれるといいでしょうね。用具、道具が廃棄される前に手を打ちたいものです。山形県鶴岡市の致道博物館収納庫、農具館や庄内町歴史民俗資料館とまではいかずとも…です。(写真2)
ネーミングとパッケージデザイン
山形県東田川郡庄内町「余目町農業協同組合」が販売元の「紫そ巻」の箱を例に考えてみましょう。(写真3)
しそ巻は庄内地方で受け継がれてきた郷土料理。味噌を芯に、青じそで巻き、油で揚げたものを数本、串に刺した絶品。ご飯はもちろん、お酒の友としても人気の一品。パッケージには葉の形の窓があり、中味を確認できます。
それは良しとしても、しそ巻の美味さが伝わって来ません。作り手の想いや顔が見えて来ません。それには、作り手の話をじっくり聴き出し、しそ巻がなければ夜も日も明けぬという御仁を集めての「しそ巻談義」に花を咲かせる中で、パッケージに刷り込むメッセージが出て来るのではないでしょうか。
パッケージは小なりといえども、営業マンの役割も果たします。あまたある商品の中で目を惹くのは、大胆なデザインとことばです。このネーミングの由来は、と問われたら10分は語れる物語を持てるかどうかで決まります。
デザインを発注する時には必ず意向を伝え、ラフデザインが上がった時には、臆せず、感じたままの感想を伝え、場合によっては再考をうながし、熱い想いを伝えましょう。