ねぎ、畳表、生しいたけの3品目にセーフガード暫定措置が発動されてから60日が経ち、期限200日の3分の1が過ぎようとしている。次第にその成果が現れているとの報道もある。政府が農家・日本農業のことを真剣に考えている証としてこの暫定措置を支持する。
スーパーに行くと、安い海外からの輸入農産物があふれている。市場経済の恩恵に浴していると喜ぶか、生鮮ねぎまでも中国から輸入しているの?日本産ねぎが足りないの?と疑問をもつか。消費者としての若い人に聞いてみたい。中国産ねぎが嫌いということではないが、調理のし方、食べ方に文化の違いもある。中国料理は全て火に通す。肉や野菜に病原菌が昔から多かったからだ。日本の家庭料理は、煮たり焼いたり素材を活かして、特にねぎはきざんで生がさっぱりしておいしい場合もある。ねぎに付着した中国の病原菌や回虫まで一緒に輸入していないとも限らない。ねぎは見た目が同じだから、輸入、国産区別なく食べている。安いので輸入野菜をスーパーで買ったなら、家に持ち帰った時、安全性に配慮した料理のし方を工夫すべきだろう。
平成8年1500トンだった輸入ねぎが平成12年には3万7000トンと23倍に急増している。価格は下落、農家の収益は著しく悪化、農業に損害が発生している事は明らか、セーフガード暫定措置発動が遅きに失したぐらいである。
自由貿易、市場経済の名のもとに、円高も手伝って日本農業部門は、バブル景気以前からやられっぱなしで来た。聖域だった米も自由化されたし、100%自給と思った野菜も輸入が増加している。
アメリカは車、電気製品等を日本から輸入している、だから米、麦、大豆、とうもろこしはアメリカから買いなさい。また、アジアは日本の工業製品を沢山買っている。見返りにアジアから買うものといえば農産物しかない。日本農業はどんどん譲歩して門戸を開放して来た。それでも、日米貿易摩擦が解消したわけではない。日本のデフレ不況は深刻化している。
高齢化した日本の農家に、ねぎの価格で輸入品に対抗しろと言っても、個々の農家の自助努力だけではいまの市場システムでは到底無理だ。中国の人件費が10分の1だし、生産資材コストも安い。栽培指導は日本人が行っているとも聞く。品質はいずれ向上し国産品に近づく。それでも、農薬取締法や肥料取締法がある国産野菜の方が食の安全性では断然勝る。WTOセーフガード協定に基づいた今回の政府決定も、正式措置までの道のりはけして強固なものではない。エコノミストや自由貿易論者からは、「安易なセーフガードの発動が日本企業に甚大な影響を与える可能性がある」、あるいは中国の報復措置、アメリカの「貿易自由化への懸念」表明などセーフガードに反対する勢力が根強くある。参議院選挙の農村票期待にすぎないとの批判もある。この際、農水省と政府関係者に申し上げたいのは200日後、正式セーフガード発動の意志を断固貫いてほしい。その事が食糧・農業・農村を守ることになる。