NHKテレビ画面に(2月20日午前)釘付けになった。外務省のNGO対応について、鈴木宗男、田中真紀子の両参考人を招いての衆議院予算委員会の集中審議を生中継していたからである。田中真紀子前外相は、与野党の難しい質問に、丁寧且つ小気味良い答弁で、あっという間の1時間10分を終了した。役者、田中真紀子ショウと言いたいような画面。彼女は自分の言葉でずばり表現するから、視聴者の心にストンと落ち、視聴者の深層に漠然と思っていることが彼女の言葉で生き返り、納得する。
一方、鈴木宗男議員の参考人は言い訳に終始し、持ち時間もほぼ2倍費やしていた。おじさん向けプロフェッショナル政治談義。旧態依然とした政官癒着の構造が再現。心無い政治家に翻弄されないよう、外務省役人よ、しっかりしてほしいと願うのみ。
さて、この田中真紀子参考人の証言から首相と外相と事務次官、それに首相取り巻きの人間模様と仕事振りが浮き彫りになる。田中真紀子の国民的人気を取り込んで昨年4月小泉内閣ができたのは周知の通り。しかし、彼女を外相に任命し、外務省改革を課題として命じながら、首相は本心から彼女の行動・改革をバックアップしていなかったこともわかってくる。首相にネガティブ情報を耳打ちするのか、外相を飛び越えて、ひんぱんに首相官邸を行き来する外務省幹部達を上司である外相は快く思っていなかったとも証言。NGOに関する限り、「真紀子は正しく、鈴木や野上が悪い」ことは多くのメディアが伝えるところ。
首相は彼女を利用するだけ利用し、都合悪くなったところでポイと捨てた。真紀子さんの証言は「自由にやれというから動こうとしたら、誰かがスカートの裾を踏んでいて前に動けない。振り向けば、進めと言った本人のような思いがした」という。女性達の感想は「真紀子さん、かわいそう」となる。「私を更迭した小泉首相の判断は残念ながら間違っていた、次官を先に切るべきだった。小泉さんも、派閥に羽交い締めにされ抵抗勢力に踏み切った」と最後の方で断ずる。テレビ放映後のインターネット調べでは、真紀子支持75%というのもある。逆に小泉内閣支持率は下落の怖れありか。この事態を3月経済危機を増長し、「政局」だという人もいる。
このような人間関係の煩雑さは、小規模ながらサラりーマンの世界には、いたる所に存在する。社長と専務、部長と課長の不仲。JAでも組合長と学経理事のソリが合わぬ例はいくらでもある。
日本農業にも似たようなことがいえる。食管法の廃止に際し、政府は「作る自由、売る自由」を唱って、農民に自由に動ける夢を与えたかのように振舞った。実は政府は米買い上げ責任を放棄し、背後で減反政策を強化しながら、結果は農民から米作りの自由を奪う。米価は下がり、売る自由も農民にはままならぬ。
田中真紀子さんは、国会で、鬱積した思いを吐露できた。そして国民の共感を呼んだ。サラリーマンや農民には、そのような場がない。したたかに生き残るには事態の好転を待ち、沈黙・忍耐・我慢しかないのだろうか。