アメリカ最大の肥料会社IMC社が諸般の事情により、穀物メジャーのカーギル社に買収される。形はカーギル資本70%対IMC資本30%の子会社MOSAIC社を新しく設立するという。燐酸や加里肥料などで長年取引のあったJA全農肥料農薬部がIMC謝恩パーティーを呼びかけて、IMC本社招待を含め関係者約100名が会費制で参加した。主要メンバーは、IMCの海外研修生。
IMCの研修制度とは1962年が第1回で現在まで続いている2つのコースがある。1つは “ヤング・エクゼクティブ”コース、その名のとおり将来性のある30歳前後の若手が毎年一人派遣されて現在43名の修了者がいる。
米国の会社でマンツーマン研修。ファミリーの一員として歓迎される。期間は3ヶ月。その間に論文を1本書くこと、最終日に職場の人たちの前で英語でスピーチすること。緊張の一瞬だが無事に通過すれば本人写真入の修了証をくれる。
英語も上達、度胸もつく。最初の頃は、肥料の輸入業務の若手担当者が順番に派遣されたが、組織には優秀な人材が沢山いるのに不公平だという声で、1970年半ば頃から人事部による試験制度に改められた。推薦にもれたら、“浪人”する熱心な研修生もいた。
もう1つが“IMCインターナショナル・ファーテライザー・マネジメント・セミナー”コース、IMCが世界の得意先の肥料マネジャー・クラスを集めて行う研修に日本からも参加できる制度、商社やメーカーからも希望すれば行けた。IMCの要望は英語が60%は理解できることと条件がやや甘かったから、多士済々ベテランの肥料担当者が派遣された。期間は4週間。24名の修了者がいる。この研修の特徴は、世界の肥料マネジャーたちが同じ教室で学び、研修旅行で、寝食を共にすることで国際的に知己を広めることができる。バングラデッシュやブラジルなど開発途上国の参加者には、後に農業大臣になる人もいた。
謝恩パーティで研修生を代表して挨拶したのは1964年ヤングエクゼクティブ修了のN先輩71歳。少し錆びついてはいたが英語で挨拶。昨年の研修生は20台の女性肥料担当者。年齢層は50年の巾がある。IMC側から見れば研修修了者は、味方になると期待するかもしれぬが、必ずしもそうならないのが教育か。アンチIMCになる人もいる。
その後、輸入交渉の窓口になった研修生は何人もいるが、恩になったから甘い価格を受け入れたという事実はないはず。ほかの輸入ソースが安ければ他所から買う。IMC研修制度は、肥料業界版日米の絆(きずな)だったといえる。肥料専業の会社に穀物メジャーの支配権が移れば状況は変わる。日本に更なる農産物開放を迫る米政府と穀物メジャーは人事交流もある。日本のJAには厳しい姿勢の穀物メジャー。新会社は研修制度を引き継ぐだろうか。