全農のホームページをパソコンで開くと全農改革員会の概要が読める。1月からもう8回も開催されている。回を重ねるごとにまとめ方が要領よくなってどんな議論がなされたのかが分かる。
しかし、委員会で出された意見がそのまま答申されたとして改革が直ぐに実行されるかどうか難しい。その1つ、全農の広報について、「消費者向け広報は、消費者のニーズとの間にずれがある。ニーズを吸い上げ消費者に有益な情報発信のしくみを構築すべきである」とある。全農は生産者団体であり、国産農産物の安全性をPRするのが精一杯。消費者向けの広報は間口が広く雲を掴むような頼りなさがある。生産者にも消費者にも「もっと近くに。」というJA全農のキャッチコピーすら国民に深く浸透しているようには思えない。
消費者のニーズにあたる品質の良いJA扱いの国産品で、常に低価格、近くで手に入るという広告・広報までには程遠い。テレビ広告は膨大なお金がかかる。JAの製品価格と手数料は広告費込みの構成内容にはなっていないのではないか。広告費を農産物に含めればJAの価格は高くなる。消費者向けよりJA組織向け広報の重視が続いた。改革議論の以前に、予算削減がある。統合連合を推進する過程で、「リストラ、改革、挑戦」の下に、広告・広報予算が削られた。とくに消費者向け広報は担当部署から経費削減の標的にされる。予算が削られ、人事ローテーションにより期限が来れば担当者は広報部署を外れる。使える専門の人材は育ち難い。この風土を改めるには、全農経営陣が広報マインドの重要性に気付き、強力な指導する事が先決だろう。
2つ目は全農の営農指導について、「売れる農産物をどう生産指導していくかの視点で販売戦略を立てろ」という。販売業務でこの視点を忘れたはずはないが、輸入農産物や量販店の間で苦闘している。農家の方が専門家でJAや全農職員が指導できない特殊農産物も多い。栽培技術は行政が先行して担ってきた。営農指導には経費と長年蓄積した専門知識が必要とされる。産業組合、民営化した肥料公団、全販連、全購連が合併を繰り返した現在の全農の沿革を再認識すべきだろう。それで新しい時代に外部の目を取り入れ管理を強化する。言うは易し、実態をもつ体制に育つのは容易ではない。が、消費者ニーズでは一歩前進ではある。
改革委員会開催期間中にも色々な不祥事が発覚した。全農秋田の米事件は国から補助金をだまし取ったり、入札制度を悪用したり、その都度、釈明がホームページに掲載されている。恥ずかしい。改革委員会の提言を謙虚に受け入れ、農民が主人公である農協の原点に立って改めるべきは速やかに業務改善すべきだ。本紙掲載の森島先生のいう骨太の農業理論の構築に、関係者が競って参加できる職場環境を早急に整えてほしい。