政治権力をカネに変えた、として逮捕された鈴木宗男元自民党代議士が今回の衆議院選挙で新党「大地」を作ってまた立候補している。鈴木逮捕に塀の中でハンストにより抗議した佐藤優氏の本「国家の罠 外務省のラスプーチンといわれて」が売れている。
被告人佐藤氏と取調室の西村検事とのやり取りが面白い。国策捜査は「時代のけじめ」として必要で、時代を転換するために象徴的な事件を作り出し断罪する。法律はその基準を変えて、つまりハードルを下げ、摘要するのだという。一昔前なら鈴木宗男氏の貰った数百万円は誰も問題にしなかったが、今や政治家に対しての適用基準は厳しくなって、一般国民の目線で判断する。ワイドショーと週刊誌で事件が出来ていくようなものという。
検事「仕事は与えられた条件の範囲でやればいいんだよ、成果が出なくとも。自分や家族の生活を大切にすればいいんだ。それが官僚なんだ。佐藤さんは仕事のために鈴木宗男氏との政官の関係もやりすぎていつのまにか一線を越えていた」「国策捜査の対象になる人は、その道の第一人者なんだ。ちょっとした歯車が違ったんで塀の中に落ちただけだ。そうゆう人たちはどこかで無理をしている。揺さぶれば必ず何か出てくる。そこで引っ掛けていくのが検察の仕事」「秘書給与流用事件もみんなやっていることで今までの基準では詐欺罪に問われるようなもんじゃなかった」。
民主党の山本譲司元議員辞任の例も実刑になったのは、世論が税金の使い方に厳しくなったと裁判所が反応した結果と思う。上告すれば執行猶予を取れた。この山本事件で国会議員の秘書給与にたいするハードルが下がった。「時代のけじめ」をつけたことになる。
小泉首相が推し進める新自由主義モデルとは個人が何よりも重要で、経済的に強い者がもっと強くなることによって社会が豊かになる。強者が機関車の役割を果たし客車である弱者の生活水準も向上すると考える。
鈴木宗男氏はむしろ公平配分路線だろう。旧来の政治家像は、経済的には弱い地域の声を汲み上げ、政治に反映し公平配分を担保することだった。この考え方を断罪しなくてはならない時代が来た。公平配分路線を堅持する政治家は遅かれ早かれ政界から排除される力が作用しているという。
外交は国際協調的愛国主義から排外主義ナショナリズムへ時代が移る国家路線転換があった。国策捜査は逮捕が一番大きなニュースで、少し経てば忘れてしまう事がいい形。うまい形で再出発できるように配慮するのが特捜検事の腕という。秘書給与で議員辞職した辻元清美氏も田中真紀子氏も立候補している。日本農業から見れば公平配分路線で国際協調的愛国主義があるべき理想の政治と今まで信じてきたが、この本が真実を語っているとすれば、国の路線転換と農業政策・農協理論に今後どう折り合いをつけるべきなのか。