「JA全農の肥料事業に独占禁止法を適用する方向が強まっている」という日経新聞(5月26日)の報道に対し、本誌農協新聞(7月10日)でJA全農加藤専務が反論している、当然ながら加藤専務の主張の方が正しい。行政刷新会議分科会は、マスコミ受けする課題を見つけないと存在意義が問われるのか、アグリビジネスに理解不足か、それとも、JA全農に対する財界やアメリカからの圧力なのか、この時期にこの課題を取り上げる事に見識を疑う。
第1に、農協・生協など協同組合の事業に、排他的行為等違法行為がなければ、独禁法は除外される。JAだけに法律を適用し、同じ農業協同組合法に基づき設立されたJA全農を「農協ではない」と立証するのは、実態的にも困難であろう。第2はJA全農が化学肥料のシエアー7割あることが「農業の健全な発展が阻害されるおそれがある」にも無理がある。加藤専務は7割でなく6割しかないと指摘している。JA全農は流通機能だけで、化学肥料を生産していない、よくいわれるようにJA全農を通すだけの決済機能で7割程度の数字になるのであり、マーケットを独占支配する力はないだろう。JA全農の手数料は安く、安定供給の保険料のつもりと顧客のJAは割り切っている。肥料販売は自由競争である。大手商社員が農村に入り手土産を持って個々の農家を訪問し肥料の注文をとった時代もあった。しかし、社員の給料が高くコストも合わず、早い頃に合理化し逃避した。大手化学メーカーも、化学肥料の生産から近年撤退を余儀なくされている。大手企業は日本農村を捨てて儲けの大きい海外や精密化学に事業転換したのである。一方、農業生産に化学肥料は必要不可欠である、JAやJA全農は、農家のための農協である、需要が毎年減るにも係わらず、肥料から撤退するわけにはいかない、輸入肥料も入れて懸命にJA肥料事業を支えてきた。事業改革の結果、7割のシエアーに達したのだろう。政府の行政刷新会議は、日本農業の健全な発展を促進するのが本当の目的であれば、大企業に向かって日本の農村から逃げてはいけない、JA全農チャンネルと堂々と競争し、将来は日本の農村にも投資し農業の発展に責任を持つよう進言すべき時と思う。