東日本大震災から1年が経過した。農協協会等が主催した大手町での特別講演会。JA福島5連会長の庄條徳一氏の「福島県における大震災・原発事故による被災の現状と課題」を聞いた。
テレビや新聞で報道される被災情況ではなく、生身のJAリーダーの言葉に、聴衆は思わず背筋を正して聞き入った。福島県の原発事故による農業被害の損害賠償537億円の請求に対し、東電は当初、請求額の二分の一を仮払いにするというものだった。JAグループは、畜産の餌代もあり全額支払うよう粘り強く、且つ正々堂々と交渉を続けたという。その結果、請求額の9割の412億円の入金を1月に確認できた。そして農家は年を越し正月を迎えることが出来たという。
背景には、東電は一度、賠償額の一部を支払えば、二度目は後回し、その次の支払いは何時になるか判らない。そのうち情況が変わる、被害者の熱意も結束も時間とともに薄れてしまうことを暗に予期しての処置かもしれない。
福島のJAグループは東電に交渉で負けなかった。その間、福島産の原乳から、放射能が検出された、放射能に汚染された福島産ほうれん草を破棄するよう国から言われた。消費者に今まで自信を持って自分の生産物を届けていた農家の心情としては、この怒りを誰にぶつければいいのかわからない。仲間の農家3人が自殺した。
福島は、必ず復活しますという。床條氏は会津市の生まれ。120年前、会津藩が徳川幕府側に味方したばかりに、明治新政府により会津は徹底して破壊された。残った人々が復興に力を尽くし今日の会津を歴史と文化の街に作り上げてきた。福島を「安心して農業に勤しむ」「福島ブランドをトップブランドにする」「多様な担い手・農業生産回復・拡大」「地域の絆」「JAがかけがえのない存在」をめざすという。本物の復興リーダーがJAから現れた気がする。福島の復興にはJAが中心にならなければならないだろう。JAしか頼れないとも言われる。同じ講演会で評論家内橋克人氏は、協同組合は日本再生の先頭に立っていただきたいという。今年は世界協同組合年である。