加入していてもその保険が現実に実行されないほうがいい。がん保険などはまさにその最たるものだろう。
しかし、日本の高齢者の二人に一人が癌に侵されるリスクがあるとNHKスペシャルで放映された矢先に、老妻と二人暮らしの自分に振りかかった。6月に連れ合いが胸腺癌の手術をした。食欲はあるのに、体重計に乗る度に体重が1kgづつ減少している、何故かなと独り言を言っていた。
女性がダイエットする時代でもあり、日常的にはなんら症状もないので誰もが気にしないで過ごした。区役所から「特定健康診査受診券」が配布される。昨年まで無料だったものが有料500円、肺がんX線検査をすると100円追加となる。3月期限間際にかかりつけ医で例年通り受診券に基づき健康診断した。
1週間後、そのかかりつけ医から電話があり、本人に再度病院へ診察に来るようにいう。不吉な予感もしたが、本人だけに話すという。それから数々PET・CT検査のためのヨード造影剤の静脈内投与など、検査の度に連れ合いはすっかり疲れ果てて帰宅した。
1ヵ月後に国立大病院呼吸器科医を紹介され、再度各種検査の実施後、入院日程を提示された。「胸腺に腫瘍がある。このまま放置すれば3年から5年の寿命、骨の後ろに影がありX線では見つからずCTスキャンでようやく見つかった。切りましょう」と主治医。それからは未経験の連続で、主治医の言うスケジュールに従うしかない。
入院は金曜日、この日は数々の検査がある。土曜・日曜は自宅に帰っても良いが、個室はキープしてくださいと病院事務。月曜日に来ても個室が塞がっていたら火曜日の手術に支障をきたす。差額ベット代は保険の対象外で1日3万3千円。エッそれって独占禁止法、弱い者に対する脅迫のように聞こえる。差額ベットは病院経営の抜け道という事情を察知はするが、個室は贅沢品としても、病院が休みの土日も同じ料金を取るのは疑問に思う。診療費・介護費を正当にもっと高く評価すれば差額ベットを不自然に高額にしなくてもすむはず。
連れ合いは手術を終え、2週間後自宅に無事生還した。生協経由のがん保険に加入していて、経済的にも命拾いをした。生協や農協の保険は、事故があれば背後の保険会社が気持ちよく支払い相談に応じてくれることを実感した。信用と組織力だろう。