その3日前の3月30日、政府は新たな食料・農業・農村基本計画を閣議決定している。
新基本計画は農政を国家戦略として位置づけ、農業・農村の価値は「お金で買うことができない」、「国民全体で農業・農村を支える社会の創造をめざす」と明記した。
しかし、農業WG初会合で分科会会長の大塚耕平内閣府副大臣はこんな発言をしている。
某委員が「新政権になってまとめられた基本計画ですから…」と、これとWGでの議論の整合性について質問したところ、
「基本的には農水省がおつくりになった計画とは切り離して、フラットに議論していただきたいなと思っております」――。
エッ! そもそも基本計画は「農水省がおつくりになったもの」ではなく閣議決定したものでは?。「国家戦略」との文言も国家戦略室との調整で盛り込まれたと聞く。
議論で不整合が出れば調整するのが私の仕事、とも発言しているが、閣議決定のわずか数日後にそれを軽視するような議論を促すのは、今では鳩山政権らしさというべきか。
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新政権は昨年末に決めた新成長戦略に農業を位置づけた。WGはその具体化を検討するというのが建前だ。
しかし、検討事項とされた農協に対する独占禁止法の適用除外や、公認会計士検査の義務づけなどは前政権の規制改革会議が問題にしてきたもの。その視点は市場原理主義だ。協同より競争を、であり協同の力を弱め私企業の力を強めればよいとの狙いもあった。
本来、WGは、こんな性懲りもない議論を引きずるのではなく、新基本計画に示された理念もふまえ、根本的に思想を転換して協同組合についてもまっとうな議論をするべきだろう。なぜなら新政権は国民にこうアピールして出発したからである。
「今後、日本がめざすべきはすべてを政府に依存する政府万能主義でも、格差を生み弱者を切り捨てながらすべてを民間に委ねる市場原理主義でもない」。
昨年10月のJA全国大会に寄せた鳩山総理のあいさつである。続きには「他者を尊重しながらお互いが助け合う自立と共生」の社会をめざす、とある。
WGは月末に集中審議をする。新政権はどこからスタートしたのか。そこを忘れず徹底して議論を注視したい。