コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
構造改革は高齢者イジメだ

 いまの農業構造には欠陥があるので、改革するのだという。今のままでは国際競争に勝てないからダメだ、というのである。

 いまの農業構造には欠陥があるので、改革するのだという。
 今のままでは国際競争に勝てないからダメだ、というのである。高齢者や兼業者などの小規模な農家の農業は止めさせて、大規模農家へ政治的支援を集中し、国際競争力を強くするのだという。こうして、小規模農家への陰湿なイジメが続いている。高齢者は農業を止めて何をすればいいのか、途方にくれている。
 国際市場での競争力強化は、それほど重要なのか。いまの政府は「各国の多様な農業の共存」という政策を掲げている。農業を市場競争力だけで評価すべきでない、ということを鮮明に示したものだ。だが一方で市場原理主義的な「構造改革」を唱えている。
高齢者が途方にくれるような「構造改革」は正義か。農業は市場では評価できない。だから市場の外で、政治的つまり全社会的に評価すべきだし、実際にそうしている。選挙が近づくと構造改革の声は弱くなる。これが何よりの証拠だ。高齢者も主権者だし、大多数の有権者は農業を競争力だけで評価していないのだ。
 もう1つ言いたい理論問題がある。本当に大規模農家の競争力は強いのか。米価が下がったとき、一番はじめに農業を止めるのは大規模農家と予想されている。このことは市場競争力が強いという「構造改革」の根拠を、根本的に真っ向から否定している。
 最後に、もう1つ。筆者も今のままで良いと考えている訳ではない。

(前回 減反選択性の挫折

(2009.06.15)