先日発表した民主党の政権公約を、自民党が激しく批判した。民主党は政権交代して自由貿易を推進し、日本農業を外国に売り渡そうとしている、というものだ。これに対して、さっそく民主党が反論した。農業を衰退させたのは自民党ではないか、わが党も自由貿易を推進するが、農業を犠牲にすることはない、というものだ。こうした論戦はおおいに歓迎したい。
攻撃側が強くみえるのは、いつものことではあるが、それにしても防御側の弱さが目立っている。この弱さはどこからくるか。
反論のなかでWTOやFTAの交渉を促進すると言っているが、こうした自由貿易そのものに問題があるのではないか。それは過去のものではないのか。WTO体制のもとで、農業の再生を主張することには限界があるだろう。せめて農産物は自由貿易の枠外にすることを大原則にしたGATT体制のほうが、まだましなのではないか。
自民党政府のように、口先だけかもしれないが、各国の多様な農業の共存という主張のほうが説得力がある。
民主党の経済政策は、あいかわらず自由貿易に頼って、外需に依存し、内需をおろそかにするのか。そうした輸出産業を中心にする経済界の意向を重視し、主権者である国民を軽視するのか、という疑問がある。
また、農産物の輸入を自由化しても、農業が崩壊するほどの影響はないと考えているのではないか、という疑問もある。
そうではなくて、主要な農産物の自由貿易は完全に否定する、ということを明確に宣言すべきではないか。そうすれば、強力な反論になる。もちろん非農産物や嗜好品などの農産物の自由貿易まで否定しなくてよい。
民主党は政権公約の改訂版をつくるようだ。いわゆる工程表でブレるのはいいが、基本政策でブレるのは困ったことだ。しかし、誤解があるというのなら、ただちに修正することは次善の方法として良いことだ。誤解されやすい文言というのなら、すぐ修正してほしいものである。
(前回 民主党が政権公約を発表)