これまで農協は、官僚が作った政策に対して、政治家を通して間接的にその全面的な修正や部分的な修正を求めてきた。いわば受け身の姿勢だった。だがこれからは、政治家が自分で政策を立案するのだから、農協は政治家に対して、直接に政策を要求することになる。積極的な姿勢に転換せねばならない。
ここで懸念されることは、民主党の地方の支持組織が自民党と比べて不活発なことである。それゆえ、現場の実態にそぐわない農業政策が立案され、実施されるのではないか、という懸念がある。民主党はこの懸念を一掃しなければならない。
もしも、この懸念が現実になれば、農村部での民主党への期待は急速にしぼむだろう。いちど民主党に政治を任せてみよう、という農業者を失望させ、やはり駄目だった、ということになる。期待が大きいだけに失望も大きくなる。民主党の政治家の現実的な政策立案能力が試されるのである。
党幹部が徹底した現場主義と支持組織の組織固めを唱えるのは、短い言葉ではあるが、このことを言っているのだろう。
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一方、自民党の支持組織は弱体化したとはいえ、まだまだ強力である。ここで思い出すのは2年前の機敏な対応である。あのとき、参議院選挙で大敗した自民党は、急遽これまでの農政を改めて、米粉米や飼料米などに対する支援を手厚くし、農業重視の姿勢を鮮明にした。そうして、自民党農政に対する不信を一掃しようとした。ここには、現場の実情を機敏に察知し、政策に反映させるための強力な支持組織があった。
民主党にそうした組織がないのなら、農協がそれに代わる役割を果たせばよい。それは、農協が組織として民主党を支持することではない。農協が政策立案能力を高め、民主党や自民党やその他の政党の農政を競わせて、政策要求を受け入れさせることである。
もしも、それに失敗すれば、また官僚依存の農政に戻ってしまう。現場の実態に即した政治主導ではなく、財界主導、官僚主導の農政に逆戻りしてしまう。それは民主党も望むことではないだろう。
(前回 減反政策の歴史的展望を示せ)
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