旨いか、不味いか、などと昔風にいえば下品な議論でこのホームページを汚すことになるが、それについて弁明しよう。それは、いまの民主党農政が危惧される点が、次の2点にあると思われるからである。
1.日本の米は旨いから国際競争力は強い。だから、輸入米と競争しても充分勝てる。だから米の輸入を自由化しても心配ない。
2.日本の米は旨いから、これからは外国へ輸出しよう。いままでは守りの農政だったが、これからは「攻めの農政」に転換しよう。
こうした考えの間違いを指摘しよう。
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はじめに述べたように、食味は主観的なものであり、風土的なものである。だが、なるべく客観的に考えよう。
米の食味を決めるものは、米の品種である。日本米はほとんど100%がジャポニカ種である。これは世界の中では少数派だ。世界の米の中でのジャポニカ種の割合は約15%にすぎない。圧倒的な多数派はインディカ種で約80%を占めている。
インディカ米の特徴は、細長く粘り気が少なく香りが強いことである。食感はジャポニカ米とは全く違う。食味はどうか。
食味を国際市場で考えよう。旨ければ価格は高いし、不味ければ価格は低い、と考えられる。最近の国際米価は、2年ぶりに再び騰勢を強めているが、この点については別稿で考えることにして、本稿ではインディカ米とジャポニカ米の価格を比較する。
先週2日のアメリカ農務省の資料をみてみよう。インディカ種とみられる長粒種米の世界価格は精米100ポンド当たり18.83ドル(玄米60kg当たりでは2017円)である。ジャポニカ種とみられる短・中粒種米は18.60ドル(玄米60kg当たりでは1993円)で、ほとんど同じである。
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だから、インディカ米を食べている人たちがジャポニカ米を食べたければ、同じ価格で買えるのである。だが、世界の80%の人たちは、インディカ米の方が旨いと感じるからインディカ米を買って食べているのである。日本米の方が旨いというのは、日本人の独りよがりというしかない。
市場価格が同じだから、供給価格も同じとみることができる。日本米と同じジャポニカ米、たとえばコシヒカリはアジアだけでなく、アメリカでもヨーロッパでも作っている。だから、仮に日本が米市場をさらに開放すれば、世界の各地で日本人向けのジャポニカ米を作って、日本へ輸出してくるだろう。日本人の食味にあう米を作るために、日本の技術者が招かれるかもしれない。運賃などの経費が玄米60kg当たり500円とみても、2500円程度の価格で輸入できるだろう。日本米の生産費は1万6497円だから、とても競争できない。それは日本の米生産の壊滅をもたらすに違いない。
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民主党は米の輸入を自由化しても、補償制度を作るから心配いらない、と考えているようだ。だが、輸入米の食味は日本人にとって旨くできるし、価格はこの程度だから、日本米の価格もこの程度にまで下がるだろう。民主党はこのことをしっかりと認識していないのではないか。民主党農政への最大の不安はここにある。
最後に「攻めの農政」だが、この政策は米以外の農産物で行うしかない。これは米政策としては無残な失敗に終わるだろう。だから、食糧自給率向上の政策にはならないだろう。税金の無駄遣いではないだろうか。
以上のように、日本の米に国際競争力がないことは、残念だが認めざるをえない。その理由については稿を改めて考えよう。そして、ではどうすればよいか。
(前回 戸別所得補償制度の予算は圧縮か)
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