この選挙の結果、政治は混乱するだろう。農政も混迷するに違いない。だが、それ故に、農政を根本から見直す良い機会にもなる。混乱にまぎれて、農政を休んでいる暇はない。稲や牛は日々成長しているし、それにもまして、農家の人々は毎日生活している。
これからの農政は、1つの大政党の農政を押しすすめることはできない。いくつかの政党の間で話し合い、調整をして、農政をすすめるしかない。この調整こそが民主主義なのだろう。各政党は、この調整の過程で、どこに固執し、どこを妥協するか。そして良いところだけが残っていく。そうなれば、歓迎すべきことである。
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各政党の間の調整で、論点になる政策は1つしかない。それは農政の最重要課題をどこに据えるか、という点である。
一方の政策は、食糧を含めて自由な貿易体制を目ざすべきで、そのために農産物の国際競争力を強めることを最優先にする、という政策である。
それに対して、他方の政策は、食糧安保、そのための食糧自給率の向上を最優先にする、という政策である。
この対立が最も基本的な対立である。この対立する政策の、どちらを採るか。あるいは、どう妥協するか。
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この基本的な対立から派生する重要な対立点は、兼業者や高齢者などの小規模農家を、農政の対象にするかどうか、という対立点である。これは、将来の農業構造をどう描くか、という点についての対立である。
一方の政策は、農政の対象を若者に絞り、若者中心の農業構造に誘導して、国際競争力を強める、というものである。これは、自由貿易を農政の最重要課題にする政策である。そして、これは選別政策だとして、一部から不評をかっている。
これに対して、もう一方の政策は、食糧安保を農政の最重要課題にする政策である。食糧安保には、小規模農家も重要な役割を果たしているのだから、小規模農家を含めて全ての農家を農政の対象にする、というものである。これは、農業の非効率を温存するとして、一部から不評をかっている。
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こうした対立点を抱えながら、農政の調整が行われていくだろう。この調整は党利党略から離れ、現場の意見を謙虚に聞き、日本の国益と日本の農業者の利益、を第1にして行わなければならない。そうしないと、やがて国民はその政党から離れてゆくだろう。
こうした調整の過程と結果を、国民は注意深く見守っている。そして、各政党の農政に対する国民の評価が決まっていく。
(前回 農業の老人パワー)
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