認可の理由は、「生産流通に対して、著しい支障を及ぼすおそれがあるかどうか・・・立証することが難しい・・・」というものである。だが、世界の、ことに穀物の先物市場では、価格は乱高下している。同じように、コメの先物取引を認めれば、米価は暴騰、暴落を繰り返すに違いない。
米価がコメの生産と流通に重大な影響を及ぼすことは明らかである。したがって、米価の暴騰、暴落は生産と流通に、著しい支障を及ぼすことになる。
だから、これは許可の理由にはならない。それどころか、不許可にする立派な理由になる。
コメの生産と流通に支障をもたらせば、それは日本農業の根幹を揺るがすことになる。農水相は、農業には市場では計りきれない多面的価値がある、という哲学を捨てて、市場原理主義者になってしまったのだろうか。
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農水相は「あくまでも試験上場と、こういふうなことでございますので・・・」とも言っている。だが、これほど重大なことを試してみる、などという理由で認可していいものだろうか。生産と流通に著しい支障があるだけではない。農村では「相場には手を出すな」という古くからの言い伝えがある。相場に失敗して自殺する人さえ過去にはいた。
試してみる、などということは、農業者を弄び、農村社会を混乱させる。
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農水相は「十分な取り引き量がないというふうなことは、・・・立証が難しい・・・」とも言っている。だから認可したのだという。農業者をはじめ、大勢の人が取引に参加すると考えているようだ。
だが、農協は参加しない、といっている。だからといって、先物市場からの影響を絶てるわけではない。先物市場の米価と現物市場の米価は必ず連動する。連動しなければ、そこで相場師は「サヤトリ」をして、ひと儲けできる。だから、先物の米価が下がれば、現物の米価も必ず下がるのである。
つまり、先物市場に参加しても参加しなくても、農業者は米価を通じて甚大な影響を受ける。これからは、農協と相場師との間で熾烈な闘いが行われる。この闘いには、あらゆる手練手管を使って、乗り切らねばならない。そしてコメを巨大な投機マネーが跋扈するマネーゲームの世界にしてはならない。
(前回 コメの先物でマネーゲームか)
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