首相は、一昨日の「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」とした記者会見の中で、「美しい農村・・・は断固として守り抜き・・・」といった。
だが、それは出来ない。それどころか、TPPに参加すれば、農村は荒廃する。そのことをTPP推進派に認識させることが、今後のTPP反対運動の中心に据えられるだろう。そうして、TPP参加を止めさせねばならない。
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TPP推進の中枢部は、経団連などの一部の財界にある。だから、首相の決定を、いち早く支持した。彼らは、アメリカのアジア戦略に加担し、アメリカの外圧を利用して、目先の、しかも幻の利益を追求するために、国益を犠牲にしてTPPに参加したいと考えている。外交は、いつも、このように内政の延長線の上にある。
推進派の一部の政治家は財界の代弁者だし、多くのマスコミは、財界に操られているに過ぎない。
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こうした横暴な財界に対抗するのは、これまでは労組だった。だが、いまは、労組は財界側に立って、TPP推進派になっている。
そうした労組に代わったのが、農協である。また、インターネットでTPP反対を表明している人たちである。
農協などが、10月26日と11月8日に、東京をはじめ全国の各地で行ったTPP反対の大集会は、こうした状況の中で行われた。そして、TPP推進派に深刻な危機感を持たせた。
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その結果、国会では、野党議員だけでなく、多くの与党議員もTPP慎重派に名を連ねた。また、それまでTPP反対の運動を黙殺してきたマスコミが、反対の大集会を取り上げて報道するようになった。
これは、日本の社会史上、特筆すべきことである。つまり、NPOの農協とインターネットが社会を動かしたのである。そして、民主主義を取り戻した。
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TPP反対の運動は、今後も激しく、そして長く続く。財界は、今後も政府に圧力をかけるだけでなく、第3の権力といわれるマスコミを操って、つまり、「財界の意に添わないTPP反対の報道をすれば、広告を出さないぞ」という圧力をかけ続けるだろう。
広告収入に経営を大きく依存しているマスコミは、こうした脅しに屈服するだろう。
ついでに言っておこう。マスコミは、農業や医療や教育と同じように、市場原理に曝して利益を追求させてはならない、というのが筆者の考えである。
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先日のTPP反対の大集会は、それによって、一部の財界の圧力をはねのけられることを示した。
だから、首相は、TPP参加とは言えず、協議に参加などと、回りくどく言うしかなかったのである。これは、反対運動の大きな成果である。
このことは、日本の社会史上の大きな出来事である。つまり、従来のように、労組が、財界との緊張関係の中で歴史を動かす原動力になる、という歴史の首座から降り、それに代わって、農協などのNPOとネットが歴史を動かす首座に代わった、ということである。
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TPP反対の運動は、今後も長く続くだろうし、続けねばならない。それは、現在を農業者として生き、また、農業に関わって生きる者に与えられた歴史的な責務である。運動の目的は、必ず達成できるだろう。
(前々回 TPP問題で自ら暴露した経産相の農業オンチ)
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