5月の中国・四川省の大地震から1カ月後、今度は岩手・宮城を阪神大震災級の地震が襲った。この国は「国土全体が一つの吊り橋にかかっているようなもの」と寺田寅彦が例えたそうだ(6/15付朝日「天声人語」)が、まさに日本列島は吊り橋そのものの姿。その上に1億3千万人が乗っかっているが、どうも今にも吊り橋が落ちそうな気がしてならない。
なぜなら、今、食糧が、エネルギーが世界中を揺るがしている。まともに影響を受けるのはこの日本という国。何しろ、たった39%の食料自給率、たった4%しかないエネルギー自給率の国だ。重油の高騰で漁業者は船も出せない、ビニールハウスで野菜もつくれない、そのうち、米づくりも国民総出で田植えも、稲刈りもしなければならないときがやってくるかもしれない。
でも、どっこい、この国の農家、百姓は凄い。先の岩手・宮城内陸地震で集落から避難した初老の農家が「気がかりなことは」と市の職員に問われ、「田んぼの水を見に行きたい」と答えていた。この国の農家、いや正真正銘のこんな百姓がいる限り、また、日本中の農家がこんな気持ちを持つ限り、誰が首相でも、誰が農水大臣でも、21世紀、そう簡単にはこの国の吊り橋は落ちないとは思うが…。
そんな中、北海道洞爺湖サミットが開かれる。この北の大地はわたしの故郷。机に「開拓100年記念・秩父別屯田会」という、百姓が稲束をもった図柄をあしらった楯がある。チップベツ、アイヌ語で「通路のある川」との意味とか。映画「北の零年」じゃないが、鬱蒼とした原始林を切り開き、泥炭地を客土で埋め、100年後、みごとな水田の海原が広がっている。
ところで、このサミットで日本は何を訴えるのだろう。温室ガス「50年半減」、「低炭素社会・日本」、地球温暖化を防ぐ方向としては間違いないのかもしれないが、外面を慮んばかってばかりいて、この国は果たしていつまでもつのだろう?首相は先の世界食糧サミットで、「食糧自給率向上」が世界各国が生き延びる道と宣うたそうだが、ぜひ同じことを、この洞爺湖サミットでも高らかに発信して欲しいものだ。それが北海道でサミットを開く意味だとも。
そして、「何も資源のない国ですが、農業技術と百姓魂だけは持っています。これで世界の飢餓人口8億5千万人を救ってみせます」と、大見得を切っては。以上、屯田兵3代目の繰り言でした。