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【駄々っ子】
「100年の夢」

 男子平泳ぎ・北島康介選手の2冠連覇をはじめ、北京オリンピックの日本選手の活躍が...

 男子平泳ぎ・北島康介選手の2冠連覇をはじめ、北京オリンピックの日本選手の活躍が連日報道される。冷凍ギョーザ事件、四川大地震、チベット騒動、聖火リレー騒動…数々の問題を乗り越え、中国は何とかオリンピック開催にこぎつけた。何しろ、中国でのオリンピック開催は「100年の夢」だったという、ぜひ成功裡に終わることを期待したい。
 このオリンピックのせいか、日本のプロ野球は休止状態。でも、夏の高校野球甲子園大会は健在。この大会も今年は90回の記念大会というから、戦時中の中断を含めると、約1世紀の歴史を数える。それだけに、慶応高校のエースが力道山の孫とか、ブラジル移民の日系3、4世の選手が活躍するなど、歴史の深さと裾野の広がりを感じさせる。日本人は何とも凄い大会を創ったものだ。
 高校野球は、選手のひたむきなプレーもさることながら、監督さんの指導者としての姿勢が実に良い。闘いが終わったあとの監督談話を聞くと、勝って驕らず、負けて潔く、その姿は実に爽やか。選手は毎年入れ替わるが、監督さんは毎年顔のちがう選手を育てなければならない。全国4千余りの高校に、こうした監督さんがいてこそ、プロ野球をはじめ、日本の野球の発展・継続があるのだろうと思う。
 野球の話をつづければ、戦前の25回大会で、5試合連続完封、しかも準決勝、決勝で無安打無得点試合を達成して優勝したという、当時和歌山・海草中の故嶋清一投手が、その偉業と平和の象徴として、終戦記念日の8・15日、表彰された。豪速球と懸河のドロップで打者を牛耳ったとあるが、学徒出陣で出征、あの沢村栄治さんや景浦将さんらと同様、戦場に散ったそうだ(8/15付朝日)。白球が飛び交う平和をかみしめたい。
 さて、中国は「100年の夢」を果たした。この国・日本の「100年の夢」とは何だろう?それは100年後も「戦争の(し)ない国」は勿論のことだが、森を、川を守り、「水田のある国」。以前この欄で紹介したことのある「百年の食」の著者・渡部忠世さんじゃないが、どんなことがあっても、米だけは自給し、次世代にひもじい思いをさせないことだ。自給率50%実現の工程表(農業の世界になぜ、工程表なの?)なんて呑気なことを言っている暇はないはず。ぼやぼやしていると、甲子園で白球すら追えなくなる。丁度、正午が参りました。黙祷…。(2008年8月15日、終戦記念日)

(2008.08.18)