世界同時金融危機、いや、今世界は二度目の大恐慌の真っ只中にあるのかもしれない。衣食住は人が生活していくうえでの基本。それが、衣はともかく食は穀物需給が逼迫、住はサブプライムローンの問題など、食も住も世界中で揺らいでいる。この日本も食の偽装や汚染米騒動で揺れ、住も地価が下落、マンションが売れずの不動産不況という。
衣食住のうち、食を担うのはもちろん農業。日本農業の柱である米は、幸い今年は「やや良」の出来ばえという。近所の田んぼは稲刈りがすっかり終わり、白鷺が1羽、2羽と降り立っている。田んぼに小さな生き物のいる証拠だろう。先月、新潟・佐渡では、27年ぶりに大空を朱鷺(トキ)が舞ったが、この朱鷺も田んぼに餌がなければ生きていけない。そのため、田んぼは極力農薬を使わない、減農薬栽培が行われているそうだ。
その究極の栽培方法が不耕起栽培。この栽培は田んぼに前年の切り株の間に、成苗を手植えし、「冬期湛水」といって冬、田んぼに水を張り、有機質の分解を助けるのがポイントという。こうして育てた稲は、硬い田にしっかり根を張り、病気や冷害にも強く、美味しい米がとれるそうだ。この田んぼにメダカを放すと大繁盛、ドジョウやタニシなどが爆発的に増え、無農薬栽培も可能という。
この不耕起栽培に関連して、面白い新聞記事が目に留まった(10/1毎日)。麻生内閣の閣僚の2/3が2世、3世議員、小泉元首相も次男を後継者にするとかで、世襲議員の多さが問題になっている。記事は親が耕した地盤で育ち、地域の問題にも精通しているから有権者の信頼も得られやすいが、一方で過去2代の首相が世襲だったことを考えると、逆境への対応力に不安を覚える、という内容。
この国は4代つづけて世襲議員が首相。初代は自民党ならず日本を壊し、その後の2代の首相は、1年もたたずに政権を放り出した。「明るく強い日本」を唱える新首相も、典型的な世襲議員。あの『ローマ人の物語』の塩野七生さんは、戦後日本人は遺伝子が"劣性"遺伝し、とくに戦後から一貫して「戦略」という言葉に拒絶反応があったのではと言う。この言葉には「予期しなかった困難に遭遇してもそれを解決していく才能」というのもあるが、今の政治家、世襲議員はこれを持ち合わせていない、と辛らつ(文藝春秋11月号)。不耕起栽培育ち、硬い土くれに根を張る逸材が出てこないものか...。