いや驚いた。勤労感謝の日の翌振替休日、スポーツ新聞を買いにコンビニに行くと、既に1紙もない。お目当ては横峰さくら(今シーズン初優勝)、いや、獲得賞金1億円をほぼ確実にした17歳のプロゴルファー・石川遼選手の活躍だろう。アキバ無差別殺人、元厚生事務次官襲撃などの凶悪な刑事事件や一連の中国製食品の農薬汚染や事故米問題などがつづくなか、スポーツ、そう、じつに爽やかな、このハニカミ王子に希望と明るさを感じるのだろう。
世の中、アメリカ発金融危機で株価の大暴落、格差社会の進行、消えた年金問題、後期高齢者問題など解決の糸口が全然見えて来ない。この閉塞感漂う、真っ暗闇の日本、未曾有の危機に、この国の首相は居酒屋でホッケの煮物を食べたり、ホテルの高級バーで葉巻をくゆらす。その人格は、NHKの大河ドラマ「篤姫」の天璋院に「辛酸を舐めたゆえに一段と大きくなった」と、言わしめる西郷どんとは比べるべくもないのかも(失礼)。
どうもこの国は、付け刃的な政策ばかりで、政治不在と思う。その最たるものが麻生政権が景気対策の目玉と掲げた定額給付金。これはどう考えても「政局よりも政策」じゃなく「政策よりも政局」の愚策。過日、朝日新聞の読者の声欄に「今度は正しい米百俵精神で」として、小泉元首相の誤用を糾し、「百俵の米を何万もの民に分けても一椀の粥をすするだけ。それより百俵の米を将来担う人材の育成の役立てよう」が真の意味であり、2兆円のバラマキは国民にとって一椀の粥にすぎないとの手厳しい批判が載っていたが、まさにそのとおり。
今、この国は年金、医療、食の安全、少子高齢化、財政危機、非正規雇用問題など様々な社会問題が噴出している。なかでも今年起きた食の安全問題は外国に胃袋の大半を委ねているがゆえの問題、そして、世界的な食糧需給の逼迫の中、お金で食料を買い漁るのも叶わない時代。ならば、東京都の3倍にも匹敵する耕作放棄地の解消や疲弊した農漁村再生、食料自給率向上、即ち食糧安保に2兆円全額使いますと宣言してはどうだろう、麻生首相さん。
誰かに言わせると、日本人は劣化しているそうだ。教育には時間がかかり、「茶碗一杯の粥」より「米百俵の精神」に戻るのは至難なのかもしれない。でも、英語よりは国語、漫画よりも読書はたしか。少しは「社会常識に欠ける」御仁は少なくなるのでは…。