この師走、冷たく重苦しい空気が日本列島を覆っている。思えば、今夏は「中国100年の夢」とかの北京オリンピックで沸いたが、そのあと「100年に1度」といわれる世界同時金融危機の寒波が世界中を吹き荒ぶ。この日本も自動車・電機メーカーなどの期間従業員や派遣労働者の「解雇」「雇い止め」、学生の内定取り消しなど深刻な事態を迎えている。
ひとは働いて食を得る動物。それが働き場所を失っては死ねというに等しい。何しろ非正規労働者が今や全体の1/3も占めるというのだから、年金・医療・介護などの社会構造のベースがおかしくなるはず。食うだけで汲々なのに、だれが年金や健康保険料を払おう。週刊朝日(12/12号)に「すべての派遣会社をつぶせ(雨宮処凛・作家)」とあったが、彼女の言うとおり、安定した雇用制度をつくり、人生設計が立つようにしないとこの国の未来はない。
次に食の問題。今年は世界的に食料危機の年でもあった。この日本、1億2千万人もいるのに食料自給率40%では、国民の食を考えていないに等しい。その点、さすが現農水大臣は誰かさんと違って、KY(空気が読める)。食糧自給率10年で50%と敢然と旗を立てる。この大臣、先にはイージス艦の海難事故で防衛省を救ったが、今度は農水省、いや、農家・国民を救うだろう…。
ところで、自給率を高めることは結構だが、この問題の根っこは農業や漁業のインフラを強めること。富山和子さんの米カレンダーのコンセプト「水田は文化と環境を守る」じゃないが、「水田」のフル活用こそが、この国の食を守る唯一の道。相も変わらず、減反、生産調整では芸が無さ過ぎよう。だれもが「お日様と米のメシはついて回る」と思うようになれば、この国の安心は買えよう。やはりこの国は「田園立国」しか生きる道はない!
さて、今年のNHKの大河ドラマ「篤姫」が終わった。脚本家・田淵久美子さんは、このドラマに「愛」「生きざま」「家族」にこだわったというが、それが随所にでていて毎回涙に誘われた。ある識者が言うには、日本は明治維新、敗戦、そして今、第3の大転換期(平成維新?)を迎えているそうだ。その体(てい)でいえば、麻生総理は「最後の将軍」?篤姫が大奥の幕引き役なら、田淵さんは戦後政治の幕引きのためにこのドラマを書いたのかもしれない。